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しっかり味のしみ込んだおいしいおでん。コツは炊いたら一度冷ますこと

2022.02.02

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

野菜おでん


野菜おでん

野菜おでんを紹介します。しっかりと味がしみ込んだおでんはおいしいですね。コンビニエンスストアでも人気商品ですが、大根以外、野菜がほとんどないことにお気づきでしょうか? 「大根の煮もの」でお話しした方法を使えば、コンビニ対応の煮くずれしない大根にできますが、他の野菜は難しいのでしょう。家庭で作れば旬の冬野菜をふんだんに使ったおでんができます。

この連載の煮ものの作り方には〇分ほど炊いて〇分以上味を含ませるといつも書いています。今日はおでんということもあり、味を含む、味がしみ込むということについてお話ししましょう。


どうしたら味をよくしみ込ませることができるのでしょうか? 長い時間炊けば炊くほど味を含むませられるのかというとそうではありません。炊く時間を長くするよりも、炊いた後に冷ますことにより味がしみ込んでいきます。

食材を構成する細胞は、炊くと熱のため細胞内の水分が膨張し、一部は水蒸気になり一部の水分は細胞外に押し出されます。加熱を止めると膨らんでいた細胞や組織は元の大きさに戻ろうと、細胞の外に出た水分を再び吸収しますが、それは最初に出た素材自体の水分ではありません。周りの煮汁が入り込み、味を含むということになるのです。その後は時間の経過とともにさらに味がしみ込んでいきます。

ただし、細胞が生きているうちは細胞膜と細胞壁が細胞をガードして他の成分が細胞内に入れないようになっています。そこで下茹でなどの加熱をして細胞膜などの機能を止めます。細胞壁同士をくっつける役割を果たすペクチンは80℃以上の熱で分解し始めるので、野菜を90℃以上で加熱するのです。

理屈っぽくなり過ぎたので最後にわかりやすい例を挙げましょう。おでんの練りものはサッと炊くだけで味を十分に含みますね。練りものは炊くと中に含まれる水分が水蒸気になって膨らみますが、火を止めると一気に縮みます。縮むときに煮汁を吸い込むというわけです。大根などと比べて膨張率が高いので味が早くしみ込みます。

「おで~ん、でんでん、ちくわにはんぺん、がんもどき、うまいうまいおでんだよ~」。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「野菜おでん」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

おでんは炊いてゆっくり冷ますことで味がしみ込む。長時間炊き続けるよりも、炊いたら冷ますという工程を2度ほど繰り返したほうが味を含みやすい。

・煮汁の上から紙蓋やラップをし、さらに落とし蓋をのせた状態で冷ます。余熱が保たれ、煮汁も蒸発しにくい。

・味を含みにくいものは最初から炊き、煮くずれしやすいもの、退色しやすいもの、すぐに味を含むものは後から加えて炊く。

きのこ類は出汁も出ておでんに向いているが、炊いているうちにバラバラになるので油揚げで包んで巾着にする。







「野菜おでん」


野菜おでん

【材料(作りやすい分量)】
おでんの煮汁(4~5人分)
作りやすい分量:出汁1.8L、日本酒1カップ、みりん大さじ2、塩6g、薄口醤油大さじ4

具材は下記の材料を参考に好みで
・大根 適量

・聖護院かぶら 適量

・れんこん 適量

・たけのこ(水煮) 適量

・海老いも 適量

・ごぼう 適量

・金時にんじん 適量

・じゃがいも 適量

・昆布(早煮昆布) 適量

・こんにゃく 適量

・しらたき 適量

・しいたけ(肉厚の大きなもの) 適量

・白菜の葉元の信太巻き 適量
白菜適量、春菊の茎適量、油揚げ適量、かんぴょう適量

・きのこ巾着(まいたけ、しめじ、えのきたけ) 適量
油揚げ適量、かんぴょう適量

・東坡豆腐(市販品の絹厚揚げでもよい) 適量
東坡豆腐」参照

・巻きゆば 適量
ゆばとカリフラワーの煮もの」参照

・油麩(2.5cm厚さに切る) 適量

・ちくわぶ 適量

・ふき 適量

・春菊の葉 適量

・練り辛子 適量

【作り方】
1.大根は2.5~3cm厚さに切り、皮を厚めにむく。米のとぎ汁を鍋に入れ、大根を入れて柔らかくなるまで15~20分ほど茹でる。米のとぎ汁がない場合は、残っている冷や飯(冷凍したものでもよい)を湯1Lに対してピンポン玉1.5個分くらいを加えて茹でるとよい。大根が柔らかく茹で上がったら、水に放して流水の中で表面のぬめりを洗い落とし、傷つけないようにやさしくざるに上げる。

2.聖護院かぶらは葉茎を切り取り、黄色の堅い繊維がなくなる部分まで5mmほどの厚みで皮をむく。縦に2つに割り、2.5~3cm厚さのいちょう切りにして面取りする。蒸気が立った蒸し器にかぶを入れ、柔らかくなるまで20分ほど蒸す。

3.れんこんは皮をむいて大ぶりに切って、米のとぎ汁で10分ほど茹でて水に放す。流水の中で表面のぬめりを洗い流してざるに上げる。

4.たけのこの水煮は添加物が使われているものは熱湯で2分ほど茹でて、水に放し水気をきって用いる。不使用のものもさっと下茹でしたほうが、異臭が残ったり煮汁が濁ったりしない。好みの大きさに切る。

5.海老いもは洗って細い部分を思いきって切り落とし、反対側の丸い先の部分も1cmほど切る。皮を5mm以上の厚さでむいたら米のとぎ汁で柔らかく茹でて水気をきる。

6.ごぼうはたわしで洗って5cm長さに切る。鍋に水を入れ、ごぼうを入れて火にかけ、沸いてから10分ほど茹でて冷水に放し、ざるに上げる。

7.金時にんじんはピーラーを使って皮を薄くむき、大ぶりに切る。5~6分ほど下茹でして冷水に放し、ざるに上げる。

8.じゃがいもはよく洗い、芽があれば包丁の刃元で取り除く。水で濡らして軽く絞ったキッチンペーパーでじゃがいもを包み、その上からラップでふんわりと包む。耐熱皿に入れて500Wのレンジで4~5分加熱し、竹串が中心部に入るようになったらラップで包んだまま置いて粗熱を取る。

9.昆布は繊維質が少なく柔らかい早煮昆布(長昆布、厚葉昆布)を用いる。水に15分ほどつけてもどしたら、4~5cm幅に切ってひと結びする。

10.こんにゃくは少し大ぶりの好みの形に切る。水に8%の酢を加えた中にこんにゃくを3分つけて臭みを抜く。酢水から上げたこんにゃくを、流水でもみ洗いして酢を流す。鍋に湯を沸かし、こんにゃくを入れて2~3分茹でて水に放し、もみ洗いして酢を完全に抜く。しらたきは適量を束ねて結び、こんにゃくと同じように臭みを抜く。

11.しいたけは軸を切り取る。笠の表面に鹿の子に包丁目を入れ、裏返して軸を切り取ったひだ側のところにも鹿の子に包丁目を入れる。軸は指で裂いてきのこ巾着に加える。

12.白菜の葉元の信太巻きを作る。油揚げは2枚に開いてボウルに入れ熱湯をかけ、ざるに上げて湯をきり、冷めたら水気をよく絞る。油臭くないものであれば油抜きせずにそのまま使用してもよい。白菜は芯から葉を外してよく洗う。葉元の白い部分のみを三角に切り取り、柔らかい葉と分ける。三角にとった葉元部分は繊維にそって縦に5mm幅に切る。耐熱皿に入れて500Wのレンジで2分ほど加熱し、扱いやすい堅さにする。完全に柔らかくする必要はない。広げた油揚げに切った白菜の葉元、葉と茎に分けた春菊の茎部分(生)を適量のせて油揚げで巻く。水でもどしたかんぴょうで、巻いたものの両端を結ぶ。

13.きのこ巾着を作る。油揚げを半分に切って袋状に開く。まいたけ、しめじ、えのきたけを油揚げに入るくらいに切り、しいたけの軸を裂いたものと一緒に油揚げに詰める。水でもどしたかんぴょうで油揚げの口を結ぶ。

14.ふきは塩(材料外)もみして3~4分茹で、冷水に放し水をきる。上下から筋を取り5cm長さに切る。筋の取り方は「干し柿なますの煮こごり」を参照。

15.大鍋におでんの煮汁を入れ大根、昆布、こんにゃく、しらたき、海老いも、たけのこ、ごぼう、れんこんを加えて火にかける。沸いたら弱火にして20分ほど炊いて火を消す。紙蓋をして落とし蓋をのせ、1時間以上そのまま冷ます。落とし蓋と紙蓋を外し、鍋に聖護院かぶら、じゃがいも、金時にんじん、東坡豆腐、しいたけ、白菜の葉元の信太巻き、きのこ巾着、ふきを加えて、再度火にかける。沸いたら弱火にして15分ほど炊いて火を消す。紙蓋と落とし蓋をのせ1時間以上そのまま冷ます。

16.15の鍋に巻きゆばとちくわぶを加えて火にかけ、沸いたら油麩と春菊の葉を入れ、全体があつあつになったら練り辛子を添えて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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