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旬のきんかんと大根を甘じょっぱいたれとからめて。新感覚のおいしい煮ものです

2022.01.29

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

大根ときんかんの炒め煮、大根の早煮





昔の料理人が煮ものに深みを出すために工夫した煮汁の使い回しについては「秋の切り干し大根」や「煮しめ」で紹介しました。そんな優れた先達が、昔と違って食卓に和洋中、様々な料理が並ぶ今のような豊かな時代に生きていたなら、彼らはどんな工夫を思いついたのでしょう。


私は以前から豚の角煮や煮豚を炊いた後の煮汁がもったいなくて仕方がありませんでした。旨みがたっぷりしみ出した煮汁を捨てるには忍びなく、かといって秘伝のたれではありませんが何度も再利用するのも違うと感じていたのです。

同様のことをチキンコンソメについても思っていました。時間をかけてとったコンソメで作るオニオングラタンスープは冬に最高ですが、残ると翌日は家族も喜んでは食べてくれません。

今日はそれらの煮汁や残りのスープを生かして、どんな味にも染まる千両役者の大根を炊きます。

この連載では野菜料理をおいしくする工夫として、各種果物を多用していますが、一般的な日本料理では、フレンチや中華のように果物を料理に取り入れることをあまりしません。しないというより未開発の領域といったほうが適当かもしれませんが。今日は旬のきんかんを大根と一緒に合わせます。香りがよい橙を使うのもよいでしょう。



普通に炊いたのでは面白くないので、食感を残して料理します。「焼き大根」で紹介した、かの高級料亭吉兆の創業者・湯木貞一氏が、お寺さんが食べさせてくれた歯ごたえのある焼き大根に衝撃を受けた話のように。

吉兆さんでさえ、その新しい料理が世の中に受け入れられ認められるには、相当の時間がかかったと聞きます。伝統という無難で居心地のよい世界に安住するのではなく、創作料理と呼ばれようがチャレンジの先にしか新たな料理の可能性は開きません。

天ぷら、あちゃら(「新れんこんのあちゃら」)、南蛮漬け(「夏野菜の揚げびたし、南蛮漬け」)などの料理は先達の挑戦から始まり、長い歴史を経て日本料理として定着しました。もちろん、名作だからこそ残ったのでしょうが。

こんなことを述べて鼻息荒くしていると、同業者からお前のチャレンジなど“たかが知れている”と言われるかもしれません。“長く生きていれば、どれくらい努力したらどれくらいの成果が得られるかぐらいわかるだろう”と。でも、そういう発想をする人が“たかが知れない”人生を歩んでいるかというと必ずしもそうではありませんね。たかは知りませんが“タガ”なら外せます(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。



ちょっとしたコツ


・「大根ときんかんの炒め煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・大根は焼く前に堅めに茹でて用いる。
 
・大根の表面につける焦げ目も味のうち

煮汁をあらかじめ煮つめてから加えることで炊き上がりに食感を残し、仕上げにさらに煮つめた煮汁をかけ、表面にのみ濃い味をつける。

・「大根の早煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・沸かした煮汁で大根を歯ごたえが残るようにさっと炊き、煮汁とともに食する

仕上げにオリーブ油を少々垂らしてもよい。








「大根ときんかんの炒め煮」(左)



【材料(2人分)】
・大根 300g

・きんかん 3個

・ごま油 小さじ1/2

・サラダ油 小さじ1/2

・赤唐辛子(種を抜いて)少々

・煮汁 ※豚の角煮の煮汁があれば、それを活用する。ない場合は下の材料で。
出汁120cc、日本酒大さじ1、砂糖小さじ2、濃口醤油大さじ1、みりん小さじ1と1/2

【作り方】
1.大根は皮を厚めにむいて4cmくらいの大きめの乱切りにする。米のとぎ汁で8分茹で、やっと火が通ったくらいのまだ堅い状態で水に放し、表面のぬめりを洗う。大根の下処理については「大根の煮もの」も参照。

2.きんかんは洗ってヘタを取り、縦十文字に切って種を除く。

3.フライパンを火にかけてごま油とサラダ油をひき、赤唐辛子を炒める。水気を拭き取った大根を入れ、強火でフライパンを返しながら焼いて焦げ目をつける。

4.3と同時進行で煮汁を作る。鍋に煮汁の材料をすべて加えて火にかけ、最初の量の2/3になるまで煮つめる。

5.3に4の煮汁の半量を加えて、強火で煮汁を煮つめながら大根にからめていく。煮汁が減ってきたら、きんかんを加えてさらに炒め、きんかんに半分くらい火を通す。

6.4の煮汁の残りを大さじ1.5くらいまで煮つめて5に加え、大根ときんかんにからめて火からおろし、器に盛る。

「大根の早煮」(右)


【材料(2人分)】
・大根 150g

・チキンコンソメ(市販のものを水で溶く) 300cc ※コンソメスープなどの残りがあれば、それを活用する。

・塩 0.5g

・薄口醤油 小さじ1と1/2

・みりん 小さじ1と1/2

・オリーブ油(好みで) 少々

・粉山椒 少々

【作り方】
1.大根は洗って皮を厚めにむき、スライサーで2.5mm厚さに切る。

2.鍋にチキンコンソメと調味料をすべて入れ火にかける。沸いたら大根を入れる。再度、沸いたらシャキシャキした食感が残るくらいに1分〜1分30秒炊く。好みでオリーブ油を少量垂らして火からおろし、煮汁とともに器に盛る。粉山椒をかけてもよい。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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