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ほろ苦い菜花を引き立てる、辛子と味噌の風味。お酒が進む早春の味です

2022.01.22

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

菜花とたたきいもの辛子和え、辛子味噌漬け


菜花とたたきいもの辛子和え、辛子味噌漬け

今日は菜花(なばな)を使った料理を2品紹介します。「わらびと新春野菜の酢のもの、菜花とゆばの辛子酢味噌かけ」で菜花の料理を既に紹介しましたが、その際は話題にしなかったことがあります。食用にする菜花と菜の花の違いです。

本来、菜の花という特定の植物はなく、アブラナ科アブラナ属すべての花のことを指します。食用品種としては菜種、かぶ、白菜、キャベツ、ブロッコリー、小松菜など多くあり、他にも観賞用や菜種油用があります。


在来種と西洋種では、在来種は葉が黄緑色で柔らかく、つぼみと茎と葉を利用し、西洋種は葉色が濃く、葉が厚くて主に茎と葉を利用します。



菜花にはほろ苦さがあり、その苦みを嫌う人もいるので苦みを抜いたり感じにくくさせる工夫が昔からいろいろとされてきました。「わらびと新春野菜の酢のもの、菜花とゆばの辛子酢味噌かけ」では漬け出汁に漬けることで、苦みを抜きつつ旨みを含ませる方法をお教えました。また、菜花には辛子と合わせる料理が多く、辛子の辛みが苦みを感じにくくさせます。

今日の原稿を書くにあたって菜花についての記事をネットで見てみると、首をかしげざるを得ない内容のものがありました。菜花の苦みを除くために辛子を湯に加えて茹でるというのです。プロの料理人がやっているという前振りで料理人本人ではなく他の誰かが紹介しており、その後にコピペされたのであろう同様の記事が散見されました。今の時代の恐ろしさですね。

辛子の辛み物質の発生には酵素の働きが必要です。40℃くらいの湯を加えると酵素が最も活発に働き、熱湯では酵素は失活してしまいます。ですから辛子を入れて茹でても、辛みによる苦みの抑制効果は期待できません。念のため試してみましたが、予想どおりでした。

この連載で繰り返しお話ししているように、プロがやっていることが必ずしも正しいわけではないという好例です。料理人の師弟の間でさえも近いことが起きます。師匠のレシピや工夫が弟子に孫弟子に伝わる過程で、伝える人間のくせや好み、独自の解釈、勘違い、エゴが加わって、最初と違う矛盾したものに変化してしまうのです。

菜花にたたきいもを合わせて雪間草(ゆきまぐさ)の風情としました。いもの粘りと食感が菜花によく合います。「花をのみ待つらん人に 山里の雪間の草の春を見せばや」(藤原家隆)。桜だけを待ち焦がれる人に、雪の間から芽生えた草の息吹を感じてもらいたいという意味です。

華やかに見えるプロの料理も風雪に耐えるような努力と工夫の積み重ねがあってこそです。売名だけに執着し、努力の積み重ねと謙虚さを忘れがちな一部の料理人に疑問を感じるのは頑固者のひがみでしょうか(笑)。野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「菜花とたたきいもの辛子和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・菜花はほろ苦いので、漬け出汁に漬けることで苦みを抜きつつ旨みを含ませる。水にさらし過ぎると甘みや風味が抜けてしまう。

・菜花のつぼみがついた茎には大小あるので、小さいものは何本かまとめて、広げた葉で花束のように包むと美しくまとまり食べやすい。

大和いもを包丁で細かく刻んで、たたきいもにする。適度な歯ごたえと粘りがあるので、食感に変化が生まれる。

海苔を少量加えるだけで旨みが一気に増す。海苔は3大旨み成分である「グルタミン酸」「グアニル酸」「イノシン酸」のすべてを単独で持っている。

・「花菜の辛子味噌漬け」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

野菜を味噌漬けにする場合は漬け過ぎは禁物。味噌の風味をまとわせるように、野菜の持ち味との相乗効果を狙う。







菜花とたたきいもの辛子和え、辛子味噌漬け

「菜花とたたきいもの辛子和え」(右)


【材料(2人分)】
・菜花 40g

・漬け出汁 約300cc
出汁270cc、塩0.4g、薄口醤油18cc、日本酒8cc

・辛子出汁 約50cc
漬け出汁50ccに練り辛子8gを溶かす

・大和いも 20g

・焼き海苔 少々

【作り方】
1.菜花は葉をむしり、つぼみのついた茎と分ける。茎部分は15秒ほど茹でて水に放し、葉は8〜10秒茹でて水に放す。2分ほど水につけたままにして苦みを軽く抜く。ざるに上げて水気を絞り、漬け出汁250ccに30分以上漬けて苦みを抜きつつ下味をつける。

2.菜花の茎と葉を漬け出汁から上げ、汁気を軽く絞る。つぼみのついた茎は大きなものと小さなものに分け4cm長さに切りそろえる。小さな茎を数本合わせて大きな茎と同じくらいの量にし、広げた葉で茎部分を巻いて花束のようにする。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。

3.大和いもは皮をむいて細かく刻み、たたきいもにする。「とんぶりと秋野菜の山かけ」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。

4.ボウルに2の菜花を入れ、辛子出汁をかけて吸わせ、ちぎった海苔を加えて和える。器にたたきいもと一緒に盛る。

「菜花の辛子味噌漬け」(左)


【材料(2人分)】
・菜花 40g

・白こんにゃく 30g

・酢 少々

・味噌漬け用の味噌 200g
作りやすい分量:粒白味噌(西京味噌)500g、日本酒60cc、みりん60cc

・練り辛子 80g

【作り方】
1.菜花は「菜花とたたきいもの辛子和え」の1〜2と同じように下処理する。ただし、菜花は茹でるだけで、漬け出汁には漬けないこと。

2.白こんにゃくの臭みを抜く。白こんにゃくは2cm×3cm、5mm厚さに切る。水に8%の酢を加えた中に白こんにゃくを3分漬ける。酢水から上げた白こんにゃくを流水でもみ洗いして酢を流す。鍋に湯を沸かし、白こんにゃくを入れて2分茹でて水に放し、もみ洗いして酢を完全に抜き水気をきる。

3.味噌漬け用味噌をボウルに入れ、練り辛子を加えてよく混ぜる。バットに辛子味噌を5mm強の均等な厚さに広げ、菜花と白こんにゃくを水切りネットの中に並べ、上下から辛子味噌ではさむ。

4.味噌の種類、塩分にもよるが、花菜は3時間半、白こんにゃくは18時間くらい冷蔵庫に入れて味噌漬けにする。漬かった菜花と白こんにゃくをネットから出して器に盛る。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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