レシピ

寒さの中で旨みを蓄えた縮みほうれん草。カルシウムと油分を加えるのが調理のコツ

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

縮みほうれん草と発芽落花生のひたし

縮みほうれん草と発芽落花生のひたし

今が一番おいしい縮みほうれん草を今晩の食卓にいかがでしょう。ほうれん草のおひたしは以前紹介しました(「ほうれん草の葉のおひたし」)が、12月〜2月頃の冬の特に寒い期間だけに出回る縮みほうれん草は一般的なハウスものと違い、濃い味がして格別です。

ほうれん草は冬の間はハウスやトンネル栽培という方法で生産されますが、縮みほうれん草は「寒締め栽培」で育てられます。冬の寒さや霜にさらされ、身を守るために葉の面積を縮めて肉厚になり、少しでも日光に多く当たるよう地面に張り付くように葉を広げます。その際、凍結を防ぐために水分を減らして糖分を蓄えるため、寒さの厳しい時期には糖度が12〜13にもなります。

縮みほうれん草と発芽落花生のひたし

一般的なほうれん草に比べると鉄分やビタミンCなどの栄養価も高くなり、甘みや旨みが多く含まれている一方で、あくもしっかりとあります。今日はあくの上手な対処法をお教えします。

縮みほうれん草と発芽落花生のひたし

縮みほうれん草に合わせるのは発芽落花生。落花生スプラウト、ピーナッツもやしなどとも呼ばれます。新芽は一般的なもやしの3〜5倍も太くシャキシャキで、豆の部分は落花生の風味と食感が楽しめます。

雪持ち笹文様の鉢に盛って、寒さと雪が作り出す縮みほうれん草の“おいしさ”を、雪をかぶった笹の“美しさ”にかけました。人間も苦労知らずの人はどこか頼りないですが、人生の風雪に耐えた苦労人は味わい深い人間力を持っています。あくを味わいに変えて野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「縮みほうれん草と発芽落花生のひたし」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

一般的なほうれん草よりもあくが強い縮みほうれん草は、茹でて水に長時間さらせばあくは抜けるが、一緒に風味や水に溶けやすい栄養素も流れ出てしまう。

縮みほうれん草を部位ごとに分け、それぞれに合った茹で方をすることで、あくの元であるシュウ酸を抜きつつも歯ごたえと風味を残す。葉は茎部分よりもシュウ酸が多いので、茎より少し長めに水にさらす。

・シュウ酸は唾液中のカルシウムと結合すると口の中でえぐみとなるが、調理の際にカルシウムと油分を一緒に使えば、えぐみをブロックしたりコーティングすることができる。油分には、シュウ酸が唾液のカルシウムと結合するのを防ぐ効果がある。

カルシウムを含むかつお節の調味出汁に漬け、油分の多い発芽落花生と合わせる。

・落花生の成分の半分は油分(血中の中性脂肪や悪玉コレステロールを下げ、動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果のあるオレイン酸・リノール酸)だが、発芽落花生は落花生の栄養成分を受け継いだまま、カロリーは約1/6程度になっているのでヘルシーである。


「縮みほうれん草と発芽落花生のひたし」

縮みほうれん草と発芽落花生のひたし

【材料(2〜3人分)】
・縮みほうれん草 1〜2束(茹でて絞って180g)

・漬け出汁 約300cc
出汁270cc、塩0.4g、薄口醤油18cc、日本酒8cc

・発芽落花生 40g

・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合

・ピーナッツ油 少々

【作り方】
1.縮みほうれん草の根元部分は土や砂がついている場合があるので、根元部分の先から縦に1cmくらい包丁を入れて、内と外の両方から水で洗う。葉と茎に分ける。葉と茎の分け方については「ほうれん草の葉のおひたし」参照。

2.鍋に湯を沸かし、塩(分量外)を入れ、縮みほうれん草の葉と茎をそれぞれ茹でる。お湯とほうれん草の量にもよるが、どちらも40秒を目安に箸でかき混ぜながら茹でる。茹で上がったら冷水に放し、茎は2分、葉は水の中で葉を広げ3分ほど流水にさらす。葉と茎を軽く絞って適宜切り、漬け出汁に30分以上漬ける。

3.発芽落花生は洗って2〜3分ほど茹で、冷水に放しざるに上げる。

4. 縮みほうれん草と発芽落花生を漬け出汁から上げて汁気を絞り、ボウルに入れる。美味出汁を全体にかけて混ぜ、軽く絞り、ピーナッツ油を数滴たらして全体になじませる。

5.器に盛って、新しい美味出汁をかけて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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