レシピ

ほろ苦い早春の味、ふきのとう。味噌に天ぷら、田楽……季節の味を楽しみましょう

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

ふきのとう味噌、天ぷら、田楽

ふきのとう味噌、天ぷら、田楽

日本には七十二候(しちじゅうにこう)という72の季節があり、明日1月20日より大寒の初候「款冬華(ふきのはなさく)」となります。款冬(かんとう)とは春の山菜ふきのとうの別名で、雪の中からふきの花が咲き始める頃ということになります。

ふきは早春の雪解けとともに、地下茎から葉よりも先に花茎が地上に顔を出し、そのつぼみがふきのとうです。ふきのとうは日本全国に自生し、古くから食用にされ、独特の香りと苦みを味わいます。

ふきのとう味噌、天ぷら、田楽

雪の下からほんの少し顔を出したばかりのものを摘むと清々しい香りがしてえぐみも少ないのですが、葉が開いてくるとだんだん苦みが強くなってきます。ふきのとうは鮮度が重要で、摘んだ後は時間の経過とともにあくが強くなります。根元の切り口を見て黒ずんでいないものが新鮮です。

ふきのとうをおひたしや和えものにする場合、あくと苦みを抜くために重曹を入れて下茹でし、水に長時間さらす方法があります。苦みは抜けるのですが、風味も一緒に抜けてしまいます。コーヒーに砂糖を入れるように、甘みを多く加えて苦みを感じにくくする方法もあります。ただしこれらの方法では風味と苦みを楽しむふきのとうが台無しになります。

ふきのとうという扱いが難しい食材は、料理する人間の見識と器量が問われます。私はまずは素材選び、そして油の上手な活用だと考えます。鮮度がよくつぼみが閉じた小ぶりなものを選んで、油で揚げたり炒めたりという下処理をします。その後に甘みで苦みをごまかすのではなく、少量の甘みを旨みとして加えるのもよいでしょう。

ふきのとうの雄花は黄色い花が咲き終わると枯れますが、雌花は白い花を咲かせた後、茎がどんどん伸びて“とうが立った”状態になります。「とう」というのは、花をつけるための茎のことで「薹」と書き、ふきのとうは漢字にすると「蕗の薹」になります。滋味深いふきのとうを生かすのか、翻弄するのか? それは料理する人間次第。“とうが立った”私の出番でしょうか(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「ふきのとう味噌、天ぷら、田楽」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・ふきのとうがたくさんある場合は、鮮度のよいうちに日持ちするふきのとう味噌を作っておくとよい。玉味噌と合わせると一般的に好まれる味になるが、甘みが少ない鉄火味噌と合わせると滋味あふれる酒の肴向けに。

・天ぷらにする際は下の部分を持ってもう一方の手で外葉を1枚1枚ていねいに開き、元に戻らないように葉全体をしっかり押さえた後に揚げる

・ふきのとう田楽は、つぼみを包む外葉が3~4枚残る程度にむいて揚げる。むいた柔らかい外葉は他の料理に使う。


ふきのとう味噌、天ぷら、田楽

「ふきのとう味噌」(写真左)

【材料(作りやすい分量)】
・ふきのとう 3個

・玉味噌(赤) 大さじ6
作りやすい分量:西京味噌500g、卵黄5個、砂糖30g、日本酒200cc 「生姜味噌」参照

・サラダ油 適量

・揚げ油 適量

【作り方】
1.ふきのとうは、つぼみを包む外葉が閉じた状態でぬれ布巾で拭き、汚れを取り除く。一番外の葉が堅いようであれば除く。

2.つぼみを包む柔らかい外葉数枚(「ふきのとう田楽」でむいた柔らかい外葉でもよい)を160℃に熱した油で素揚げにし、クッキングペーパーに広げ余分な油を除く。

3.ふきのとうを縦2つに切って、サラダ油をひいたフライパンで炒める。火が通ったら取り出し、クッキングペーパーで包んで指で押さえて余分な油を除く。みじん切りにしてフライパンに戻して再度火にかける。玉味噌を加えて混ぜ全体になじませる。玉味噌を鉄火味噌に替えてもよい。「秋野菜の朴葉焼き」参照。

「ふきのとう天ぷら」(写真手前)

【材料(3人分)】
・ふきのとう 6個

・天ぷら衣 適量
作りやすい分量:薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個

・揚げ油 適量

・塩 少々

・天出汁(美味出汁) 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合

【作り方】
1.ふきのとうはつぼみを包む外葉が閉じた状態でぬれ布巾で拭き、汚れを取り除く。一番外の葉が堅いようであれば除く。ふきのとうの下のほうを持ち、もう一方の手で外葉を1枚1枚ていねいに開き、揚げている間に元に戻らないように葉全体をしっかり押さえてくせをつける。

2.天ぷら衣を作る。ボウルに冷水を入れて卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。薄力粉を加え、粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくてもよい。

3.通常の天ぷらのようにふきのとうに薄力粉をまぶすと、つぼみ部分に衣がつき過ぎるのでまぶさない。つぼみを下に向けて開いた外葉を持って衣に沈め、余分な衣は落とす。

4.フライパンに揚げ油を入れて180度に熱する。つぼみを持って油に入れ、20秒ほど揚げて外葉が開いて安定したら、返してつぼみ側を30秒ほど揚げる。出る泡が少なくなりカリッと揚がったら、油から上げてクッキングペーパーにのせて油をきる。塩か、天出汁で食する。

「ふきのとう田楽」(写真右奥)

【材料(3人分)】
・ふきのとう 6個

・天ぷら衣 適量

・揚げ油 適量

・薄力粉 適量

・玉味噌(白) 適量 「生姜味噌」参照

【作り方】
1.ふきのとうはつぼみが外葉3〜4枚で包まれている状態になるように外葉をむく。むいた柔らかい外葉は他の料理に使う。素揚げしてふきのとう味噌に添えてもよい。

2.天ぷら衣を「ふきのとう天ぷら」の2と同じように作る。

3. 1のふきのとうに薄力粉を薄くまぶして衣をつけ、180度に熱した揚げ油に入れる。途中で返しながら1分弱揚げる。カリッと揚がったら油から上げてクッキングペーパーにのせて油をきる。

4.揚がったふきのとうに2/3くらいの深さで切れ目を入れて玉味噌(白)をはさむ。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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