レシピ

大切な日に食べる汁もの、お事汁。具材たっぷり、食べごたえ十分なごちそう椀です

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

お事汁

お事汁

1月10日は成人の日でもありますが、旧暦の12月8日にあたり「事八日」(ことようか)です。旧暦12月8日、2月8日は事八日と呼ばれ、昔から事を始めたり納めたりする大事な日とされてきました。この日に五穀豊穣や無病息災を願って食べる具だくさんの野菜の味噌汁が「お事汁(おことじる)」です。今日はお事汁を五穀(米・麦・あわ・きび・豆、またはひえ)の柄が入った椀に盛って野菜を堪能し尽くします。

お事汁は別名「六質汁」(むしつじる)とも呼ばれ、里いも、大根、にんじん、ごぼう、小豆、こんにゃくの6種の具材を入れます。具材は地方によってくわい、焼き栗、焼き豆腐などいろいろですが、小豆は必ず入ります。以前紹介した「れんこんいとこ煮」と同じですね。「10月の野菜本膳」でもお話ししたように赤は魔を払う力がある色とされるからでしょうか。

事八日、お事汁の「事」とは仕事を指し、事八日には2つの日付があり、一方の始まりの日は、他方の終わりの日になり、両方とも重要な日とされています。

「事」が農作業や田の神様にまつわる農耕儀礼を指す場合は、正月が終わり人々が日常生活に戻って農作業を始める2月8日が「事始め(ことはじめ)」で、一年の農作業を終わらせるのが12月8日の「事納め(ことおさめ)」になります。

「事」が新年に年神(としがみ。正月に各家にやって来て豊作や幸せをもたらす神)を迎える儀礼を指す場合は、12月8日が正月の準備を始める「事始め」で、正月が終わって片づけもすべて終わらせるのが2月8日の「事納め」になります。

今年は事八日の一方の日が成人の日と重なります。大人の始まりなのか、子供気分を納める日なのか? それは「事」によりますね(笑)。6種の具材ではなく2倍の具材にしたお事汁で覚悟も願いも2倍、野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「お事汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・具だくさんの汁をまとめて作り、温め直して数回に分けて食べる場合は、具材を多めの出汁で炊いた段階で置いておき、食べる分だけ味噌を溶く。最初から全部に味噌を加え、再加熱すると味噌の香りと旨みが弱まる。

・辛子だけでなく、柚子こしょうも合う。


「お事汁」

お事汁

【材料】
※まとめて作り、数回に分けて食べる前提の材料、作り方。

味噌汁(3人分。下記の分量を基本に、作る量に応じて増やす)
・出汁 400cc
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい

・西京味噌(好みの他の味噌でもよい) 100g

・日本酒 大さじ2

具材1(あらかじめ出汁と一緒に炊いておくもの)
・小豆(茹でもどす) 適量

・大根 適量

・金時にんじん(西洋にんじんでもよい) 適量

・里いも 適量

・れんこん 適量

・ごぼう 適量

・こんにゃく 適量

・厚揚げ 適量

具材2(食べる直前に加えるもの)
・焼き栗 適量

・焼きゆり根 適量

・角餅(丸餅でもよい) 適量

・せり 適量

・練り辛子 適量

【作り方】
1.小豆をもどす。50gの場合、大きめの鍋に1.5Lほどの湯を沸かし、洗った小豆を入れて再度沸いたら火を落として5〜6分炊く。水を1Lほど加えて茹で湯の温度を下げ、小豆の表面と内部の温度を近くして小豆全体に均一に火が入るようにする。温度が下がったら強火にして、沸いたら火を弱めて5〜6分炊く。茹で汁が茶色くなってきたら小豆をざるに上げて茹で汁を捨て、渋切りする。別に沸かしておいた湯1.5Lに小豆を入れて踊らないようにあくをすくいながら弱火で炊く。小豆がまだ完全には柔らかくなっていない状態でざるに上げ、水気をきる。この段階まで最初から40分くらいかかる。

2.大根、金時にんじん、れんこん、ごぼうは一口大に切る。それぞれ軽く下茹でして水に放し、ざるに上げる。里いもは皮をむいて米のとぎ汁で茹でる。水に放して表面のぬめりを洗い流して水気をきり、一口大に切る。茹で方は「小いもの含め煮」参照。
野菜類は下茹での段階で柔らかく茹で過ぎると、再加熱の際にくずれてしまう恐れがある(特に大根、金時にんじん、里いも)。

3.こんにゃくはスプーンで一口大にちぎるか、包丁で切る。下茹でし、水に放してもみ洗いし臭みを抜く。厚揚げは一口大に切る。

4.鍋に2と3と小豆を入れて、出汁を注いで火にかける。沸いたら火を弱め具材に火が通ったら火を消す。

5.ゆり根の大きくて厚い鱗片は1.5cm角に、真ん中近くの小さな鱗片はそのままで深皿に入れ、蒸気の上がった蒸し器で3〜4分蒸す。ゆり根の下処理は「ゆり根のかき揚げ、揚げ出し」参照。栗は鬼皮と渋皮をむいて10〜15分ほど蒸して火を通す。予熱したオーブントースターにゆり根と栗を入れて焼き目をつけ、栗は4等分に切る。餅は4等分に切ってオーブントースターで両面をこんがり焼く。せりの柔らかい部分は生のまま1.5cm長さに切り、堅い部分は茹でて水に放し、水分を絞って小口切りにする。

6.別の鍋に食べる分量の4を入れて火にかける。80℃くらいになったら、西京味噌を溶き入れる。ゆり根と栗を加え、味噌汁が90℃を超えたくらいで日本酒を加えて火からおろす。椀に具材と共に汁を注ぎ、餅も添える。せりを散らして練り辛子を少量の味噌汁でのばした溶き辛子をのせて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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