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味噌汁をおいしくするコツ。家庭料理だからこそできるテクニックを教えます

2022.01.06

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

ゆり根飯蒸し、白味噌仕立て


ゆり根飯蒸し、白味噌仕立て

寒い冬にぴったりの白味噌仕立ての味噌汁をご紹介します。京都などでは雑煮もこっくりした白味噌仕立てに仕上げますね。この連載では味噌汁を「フルーツトマトの赤出汁」以来、かなりの数をお教えしてきましたが、味噌汁のコツは「沸かさない」「煮えばなを手早く供する」「温め直さない」に尽きます。皆さまも聞いたことがあると思いますが、このコツ、腑に落ちていらっしゃいますか? 今日は腑に落ちていただきます(笑)。

かの北大路魯山人が、料理屋の料理は家庭料理に負ける場合があるという主旨の発言をしています。それは家庭料理には真心や愛があるというような精神論的な話ではなく、魯山人らしい現実的な部分での問題提起です。料理屋の料理は商品であり、ある一定レベルの基準を満たした上で、客を待たせることなく料理が供されることが求められます。商売である以上、原則、利益追求型で人件費削減、作業の効率性が要求されます。


料理人たちは凝った料理には力を入れ、手間と労力を惜しみませんが、味噌汁に関してはそうでない場合が多いのも現状です。その日に使う味噌汁を一度にまとめて作り、席ごとに温め直して出すことも。

一方、家庭では食事の直前に味噌汁を作るので、結果、煮えばなを出すことになります。どちらが味噌の風味が生きているかは言うまでもありません。魯山人はそこを突いているのです。

白味噌仕立てを例に味噌汁のコツをさらに説明しましょう。昔ながらのやり方では白味噌をすり鉢ですって滑らかにし、火にかけた出汁に味噌を溶いて目の細かいこし器を通します。再度火にかけ、煮立ってきたら火を弱めてあくを丁寧にすくいつつ、さらに2回ほどこしてなめらかに仕上げるというものです。

ところが実際にやってみると、一度こしているにもかかわらず、次も粒子が残り、何度こしても粒子は残り続けます。加熱を続けると味噌汁の中の味噌の粒子が合わさって大きな粒子となり、結果こすと残るのです。白味噌仕立てはしばらく加熱を続けることで滑らかになると伝承されてきましたが、実はかえって口あたりが悪くなります。

しかも粒子が合わさって大きくなるときに、旨み成分を奪ってしまうので、味も落ちます。味噌汁を沸かしたり、温め直したり、加熱しすぎたりすると、作りたてより塩辛く感じたり、おいしくないのは加熱による現象なのです。

味噌の香りは煮えばなである沸く直前の90℃以上で強くなりますが、沸かすと落ちます。沸かさなくても湯煎などによる長時間加熱も香りを弱めます。

味噌汁のコツ、腑に落ちたでしょうか。腑に落ちたら、早速実践(笑)! おいしい白味噌仕立てで野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「ゆり根飯蒸し」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・最近の炊飯器にはおこわモードもあるが、加熱むらが起きやすい。おこわ本来のおいしさを味わうには、もち米を蒸すに限る。まとめて作り、小分けして冷凍保存も可能。

・蒸している途中で加えるふり水を、酒塩(酒に塩を混ぜたもの)に替えると、旨みが増し下味もついておいしくなる。

ゆり根は蒸し過ぎるとくずれる。余熱も考えて加熱する。

・ゆり根にのせた梅肉が全体の味を引き締め風味と彩りを添える。

・「ゆり根の白味噌仕立」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・味噌汁のコツは「沸かさない」「煮えばなを手早く供する」「温め直さない」

現在の西京味噌は滑らかにこしてあるので、昔のようにすりなおす必要はない。

・味噌汁を何度もこして温め直すと味噌の香りと旨みが弱まる

こっくりさせたければ薄く葛をひくとよい。葛をひく代わりに蒸したゆり根を細かい目の裏ごし器でこしたものを少量加えるという隠し技もある。

・仕上げに日本酒を加えることで香りが立つ。日本酒に含まれる芳香成分は発酵、熟成過程で原料の米の成分が麹菌などの酵素作用によって分解されて作られるため、同じく米と麹が主原料の西京味噌にはよく合う







ゆり根飯蒸し、白味噌仕立て

「ゆり根飯蒸し」(左)


【材料(2人分)】
・飯蒸し 1合分
もち米1合、酒塩(作りやすい分量:昆布出汁25cc、日本酒25cc、塩2g) 35~45cc(好みの堅さに応じる) 「落花生おこわ」参照

・ゆり根(小さな鱗片。大きめの鱗片を切ってもよい) 20枚

・梅肉 少々

【作り方】
1.もち米は蒸す1時間以上前にといで、1時間水につけてざるに上げておく。

2.別のざるにガーゼを広げて、その上にもち米を広げる。蒸気が通りやすいように真ん中部分はくぼませておく。

3.蒸気が立った蒸し器に、2のもち米をざるごと入れて中火で蒸す。8分蒸したら一度蒸し器からざるを取り出して、中のもち米をボウルにあける。そこに用意しておいた酒塩を加えて、酒塩が全体に回るようにしゃもじで混ぜる。先のガーゼを敷いたざるにもち米を戻して蒸し器に入れ、再度、7~8分中火で蒸す。

4.ゆり根の下処理は「ゆり根のかき揚げ、揚げ出し」参照。ゆり根の小さな鱗片を皿に並べて蒸気が立った蒸し器に入れ、3〜4分蒸す。

5.もち米が蒸し上がったらボウルに入れ、4のゆり根を加える。ゆり根がつぶれないようにふんわりと混ぜて椀に盛る。ゆり根に梅肉を少量のせて供する。

「ゆり根の白味噌仕立て」(右)


【材料(2人分)】
・ゆり根(大きめの鱗片) 6枚

・出汁 400cc
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい

・西京味噌 120g

・日本酒 大さじ2

・三つ葉(小口切り) 適量

・練り辛子 少々

【作り方】
1.ゆり根の下処理は「ゆり根のかき揚げ、揚げ出し」参照。大きめの鱗片の周囲の薄い部分を面取りして除く。ゆり根を皿に並べて蒸気の上がった蒸し器に入れ、4~5分蒸す。

2.鍋に出汁を注いで火にかけて80℃くらいになったら、西京味噌を溶き入れる。ゆり根を加えて味噌汁が90℃を超えたくらいで日本酒を入れ、火からおろす。椀にゆり根を盛って汁を注ぎ、三つ葉を散らして、練り辛子を少量の味噌汁で伸ばした溶き辛子を添えて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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