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寒い日に体の芯から温まるみぞれ汁を。マスカットとわさびを添えて新鮮な味わいに

2021.12.15

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

海老いもとマスカットのみぞれ汁


海老いもとマスカットのみぞれ汁

今日はみぞれ汁を紹介します。霙仕立て(みぞれじたて)とも言い、おろした大根やかぶを出汁に加えた汁もので、その白さと景色を冬場の「霙」に見立てています。汁に入れた大根やかぶが沈殿しないように葛粉で薄くとろみをつけているので、体が温まり冬にぴったりです。

同様の料理に「すり流し(擂り流し)」という汁ものがあり、食材をすり“つぶして”ペースト状にしたものを出汁でのばして作ります。野菜では冬瓜、山いも、ゆり根、れんこん、とうもろこし、アスパラガス、豆類などを用いる、ポタージュに近いものです。


このすり流しという料理は、誰もが認める歴代の日本料理の超一流店では献立に入ることはあまりありません。フランス料理などでは同様の料理が超一流店でも供されますが、それは素材に対する考え方が違うからなのかもしれません。食材をコントロール(支配)し、手を加えてよりおいしくしようとする傾向が強い他国の料理に対し、元来の日本料理は素材を生かそうとします。おいしい食材はなるべく手を加えず、持ち味を最大限に引き出すという考え方が根付いていました。そんな日本料理の原則が意識的であれ無意識であれ身についている料理人にとっては、すり流しはわざわざやるような料理ではないということになります。「海老いも饅頭あられ揚げ」で「“つぶし”仕事」のお話をしましたが、一歩間違うとそれに近づいてしまいます。

もちろん、すり流しの中にもおいしいものもあり、献立が行き詰まったときの料理、目先を変えるための料理、端材の活用料理としてはよいと思います。ただ、そのままでもおいしい食材や部位を最初からわざわざ“つぶす”必要はない気がするのです。頑固者の執着でしょうか?(笑)

話が矛盾しているように感じるかもしれませんが、そんな中でもこのみぞれ仕立てだけは秀逸でわざわざ作るに値します。昔から超一流店の献立にもこの料理は登場します。すり流しに比べて味も風味もあっさりしているので、椀だねとなる他の食材を生かし“The 日本料理”という感じです。あっさりしている分、椀だねに工夫が必要になり、今回は海老いもをおいしく炊いて揚げたものと、アクセントにマスカットを添えました。そしてわさびの風味で全体をしめます。

私も若い頃はすり流しなど、わかりやすいおいしさで目新しく感じる料理に自身の料理人としての活路を見い出そうとしていました。しかし、それをやり尽くすと伝統的なみぞれ仕立てが逆に新鮮に見え始めたのです。時の流れの中であっという間に消えていく料理が多いけれども、代々受け継がれ磨かれ続けてきた料理はやはり奥深く、私ごときの創作が及ぶものではありません。伝承の野菜料理の深味を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「海老いもとマスカットのみぞれ汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・海老いもとマスカットのみぞれ汁は飯のおかずの汁ものではなく、単独で味わう料理、あるいは酒の肴である。したがって、飯が進むような調味ではなく、単体としておいしい調味にする。

・あっさりしたみぞれ汁に揚げた海老いもの旨みとこくが加わり、マスカットの酸味と風味がアクセントになり、わさびが味をしめる。

海老いもを揚げる作業とみぞれ仕立てを仕上げる作業を同時進行で行い、あつあつでカリッとした食感が残る海老いもをみぞれ汁と一緒に楽しむ。

わさびは汁に溶かすのではなく、椀種につけて食すと香りが立っておいしい。







「海老いもとマスカットのみぞれ汁」


海老いもとマスカットのみぞれ汁

【材料(2人分)】
・海老いものもち粉揚げ 1/2個分 「海老いもの揚げ出し」参照

・揚げ油 適量

・マスカット 2粒

・出汁 300c
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい

・大根おろし(軽く絞って) 45g

・日本酒 小さじ1

・塩 0.7g

・薄口醤油 小さじ1/3強

・水溶き葛粉(片栗粉でもよい。葛1:水2を溶く) 15cc

・本わさび(市販品でもよい) 適量

【作り方】
1.海老いもはあらかじめ炊いておいたものに、もち粉をつけて揚げ油で揚げる。

2.マスカットは洗って2〜3mmの厚みで横にスライスする。

3.鍋に出汁を注いで火にかけ、90℃くらいになったら調味料をすべて加えて味を整える。水で溶いた葛粉を少量ずつ加え混ぜて薄いとろみをつける(味をつけた後にとろみをつけること。手順を逆にすると粘度が増して舌をヤケドすることがある)。あくまでも汁ものなので薄いとろみでよい。弱火で10秒ほど炊いて粉臭さがなくなったら、大根おろしを加えてよく混ぜ、沸く手前まで熱する。

4.揚げたての海老いもを一口大に切って椀に盛り、3のみぞれ汁を注ぐ。海老いもの上にマスカットをのせ、わさびを留めて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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