レシピ

和食に欠かせない素朴な食材、こんにゃくやぜんまい。下処理のコツを教えます

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

こんにゃくのピリ辛煮、ぜんまいとふきの煮もの

こんにゃくのピリ辛煮、ぜんまいとふきの煮もの

私たちはものを食べると塩味や甘みなどの味を感じます。しかし、感じているその味の強さは食べたものに含まれる塩や砂糖の量とは必ずしも一致しません。味の感じ方は温度や他の味との相互作用(塩味と甘み、塩味と酸味などに見られる増強、抑制作用)や食感などに影響を受けます。その中で今回は食感についてお話ししましょう。

一般に水分が多くて柔らかいものほど味を強く感じます。羊羹がわかりやすい例で、練り羊羹には砂糖が約65%含まれ、同じ羊羹でも水羊羹は25〜30%くらいです。使われている砂糖に2倍以上の差があっても、どちらも食べるとちょうどよい甘さに感じますね。水羊羹のほうが練り羊羹よりも甘さを強く感じ、人が感じる甘みの濃さと含まれる砂糖の量が比例するのではないことがわかります。両者の大きな違いは砂糖の量と堅さ、つまり食感の違いが味の感じ方に影響を与えているのです。

人はドロドロになるまでものをよく噛むことはまれで、適当なところまで噛んで飲み込みます。含まれている塩分や甘みが唾液に溶ける前に飲み込むので、先のような現象が起きるのです。

今回料理するこんにゃくは一般的に味がつきにくい食材とされますが、実際はそうではありません。こんにゃくはその食感のために味を感じにくいだけで、1%の塩味がついていても人は0.4%の塩味にしか感じられないようです。

こんにゃくは手でちぎるなどして表面積を大きくして調理しますが、それは味をしみ込みやすくするためというより、あくや独特の臭みを除くのに効果があります。原料のこんにゃくいもには、ほとんどにおいがありませんが、凝固剤の水酸化カルシウム(強アルカリ)と結びつくと生臭いにおいが発生します。このにおいは魚の生臭さと共通する成分で、アルカリ条件下で強くなります。

こんにゃくは主役にも引き立て役にもなる和食に欠かせない食材のひとつです。効果的なにおい抜きの方法とおいしい調理法を学んで、日々のおばんざいにハレの料理にと活用しましょう。それから今日はこんにゃく同様、おばんざいの定番でもあり、料理屋も和えものなどに使用するぜんまいの煮ものも紹介します。こんにゃくやぜんまいなどの素朴な素材は、丁寧な下処理と一工夫で高級食材にも負けないおいしさになります。今日も野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「こんにゃくのピリ辛煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 香り ◎刺激

こんにゃくのにおいはアルカリ性になることで発生するので、酸を加えれば中和してにおいが消える。塩もみして熱湯で茹でてさらすのが一般的であるが、この方法では臭みの希釈効果はあるが根本的な原因には対処できない。

・臭みを取るために8%の酢を加えた水に切ったこんにゃくを3分つける

・歯ごたえのあるこんにゃくが好みならそのままで、柔らかいのが好みなら、まな板の上に置いて手のひらでこんにゃくを強く叩いた後に調理するとよい。

・「ぜんまいとふきの煮もの」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

市販品のぜんまいの水煮には酸化防止剤やクエン酸が含まれていることが多い。下茹でして水に放した後、水気をきって調理することをすすめる。

・ぜんまいに限らず、水煮の野菜には旨みと風味が少ない。ベジタリアンでなければ焼いた鶏肉の皮を一緒に炊くとこくが出て旨みが増す。ふきなど風味のある山菜とともに炊いて風味を補う。

・薄味でまとめて炊いておけば、煮ものとしてだけでなく白和えなどの和えものにも使える。煮ものとして食べる場合は、温める際に少し調味料をたし、和えものに使う場合は薄味のまま用いる。


こんにゃくのピリ辛煮、ぜんまいとふきの煮もの

「こんにゃくのピリ辛煮(左)」

【材料(2人分)】
・こんにゃく(黒こんにゃく、赤こんにゃく。黒こんにゃくだけでもよい) 各75g

・酢 適量

・サラダ油 小さじ1

・出汁 300cc

・濃口醤油 小さじ2と1/2

・みりん 小さじ2

・唐辛子(種を抜いて) 1本

【作り方】
1.こんにゃくをまな板の上に置いて、手のひらで強く叩いてこんにゃくのコシを取り柔らかくする。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。2cm角に切る。

2.こんにゃくの臭みを抜く。水に8%の酢を加えた中にこんにゃくを3分つける。酢水から上げたこんにゃくを流水でもみ洗いして酢を流す。鍋に湯を沸かしこんにゃくを入れて2分茹でて水に放し、もみ洗いして酢を完全に抜く。

3.鍋にサラダ油をひいて唐辛子を加えて火にかけ、水気をきったこんにゃくを入れて炒める。油がこんにゃくになじんだら、出汁を注ぎ調味料を加える。沸いたら弱火にして15分ほど炊いて火からおろし、そのまま1時間以上おいて味を含ませる。

4.こんにゃくを温め直して器に盛る。

「ぜんまいとふきの煮もの(右)」

【材料(2人分)】
・ぜんまいの水煮(市販品) 100g

・ふき(茹でて筋を除いたもの) 30g

・塩 少々

・油揚げ(1cm×3cmに切る) 40g

・出汁 300cc

・濃口醤油 小さじ2と1/2

・みりん 小さじ2

【作り方】
1.ぜんまいは熱湯で1分ほど茹でて水に放してざるに上げる。布巾に包んで水気を除き4〜5cmの長さに切る。

2.ふきは葉を除く。茎の部分に塩をふり麺棒を転がすように両手のひらで塩もみする。たっぷりの湯を沸かしてふきを入れ、茹でて冷水に放す。冷めたら水をきり、上下から筋を取って3.5cmに切る。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。

3.鍋に1のぜんまいと油揚げを入れ出汁を注いで火にかける。味に深みをつけたければ焼いた鶏肉の皮(材料外)ひとかけを一緒に加える。他の料理で鶏肉を使った際の下処理で出た余分な皮を冷凍保存したものでよい。調味料を加えて沸いたら火を弱めて5分ほど炊き、ふきを加える。さらに3分ほど炊いて火からおろし30分以上味を含ませる。

4.3を温め直して器に盛る。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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