レシピ

大根をごま油と日本酒で焼くだけ。手軽に作れてしみじみおいしい冬の定番料理

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

焼き大根

焼き大根

今月はこれで4回目の大根料理になります。それくらい大根にはおいしい料理がたくさんあります。大根は手軽に手に入り使い勝手がよいので、今の時期は家庭でも冷蔵庫に常備されているのではないでしょうか。そんな身近な野菜であるからこそ、プロが料理する際には家庭との違いというものが求められます。

焼ききのこの柚子おろし和え」では大根の臭みを出さない工夫を。「千波大根の磯辺風味」では大根をいかに千両役者にするかを。そして「大根の煮もの」では大根をいかに柔らかくおいしく炊くかについてお話ししました。プロの威信にかけてというところでしょうか(笑)。

こうしてプロだ、玄人だなどと言っているとその反対の素人の白き心を忘れがちになります。素人の語源は「白人(しろひと)」で、室町時代に「しらうと」となり、江戸時代に「しろうと」へ音変化したといわれます。そして素人の「素」には「ありのまま」という意味があります。

ここで思い出す大根の料理にまつわる話があります。かの高級料亭吉兆の創業者湯木貞一氏が大徳寺の塔頭(たっちゅう)を訪ねた際、吉兆さんが来てくれたから何かおいしいものを作って食べさせましょうということになったそうです。湯木氏は玄人の自分に素人のお寺さんがうまいものを食べさせると言うが、何を出してくれるのだろうと思ったそうです。そして出されたものが、裏の畑で抜いてきたばかりの大根を切って、茹でることもなく生のまま油をひいた鉄鍋で焼いて醤油を垂らしただけの焼き大根でした。それを口にすると何とも言えずおいしく、大根は何も柔らかくしなくてもよいのだと教えられたという話です。

玄人の常識、固定概念、そして威信。そのようなものから離れ、何ものにも染まっていない白い心でありのまま(素)の素材に向かい合う。今一度、このことを噛みしめ、今日は焼き大根を作ります。奥深い野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「焼き大根」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・畑で採れたての大根であれば下茹でせずに、時間をかけて焼いて火を通していくのもよいが、市販されている大根は焼く前に堅めに茹でたほうがよい

・大根の表面につける焦げ目も味のうち。

大根自体に余分な味はつけない。ごま油の油分と日本酒の旨み・甘みのみで大根の素の味を補う程度にとどめ、食べるときに醤油をつける。

・大根の葉とむいた皮部分をきんぴら風に炒めて、梅肉の酸味とごまの風味で味をつける。焼き大根と一緒に食べるとアクセントになる。


「焼き大根」

焼き大根

【材料(2人分)】
焼き大根
・大根 10cm

・ごま油 少々

・日本酒 大さじ4

・濃口醤油 適量

大根の葉と皮の梅ごま風味
・大根の葉(茹でて絞ったもの) 45g

・大根の皮 15g

・サラダ油 少々

・日本酒 小さじ1

・濃口醤油 小さじ2/3

・梅肉 小さじ1/3

・白ごま(いって粗ずりしたもの) 小さじ1

【作り方】
1.大根は2.5cm厚さの輪切りにして厚めに皮をむく。米の研ぎ汁で10〜11分茹で、やっと火が通ったくらいのまだ堅い状態で水に放し表面のぬめりを洗う。大根の下処理については「大根の煮もの」も参照。

2.フライパンを火にかけごま油をひき、水気を拭き取った大根を入れる。中火で両面を焼く。

3.焦げ目がきれいについたら(「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真参照)、日本酒を注ぐ。途中で大根を返して日本酒を大根に吸わせるように絡めていく。

4.日本酒がほとんどなくなったら火からおろす。

5.大根の葉と皮部分の梅ごま風味を作る。葉は下茹でして水に放してよく絞り5mm幅に刻む。皮は3mm幅×2.5cm長さに切る。フライパンを火にかけサラダ油をひいて葉と皮を加え強火で炒めて、皮に火が通ったら日本酒と濃口醤油を加えて絡める。汁気がなくなったら梅肉と白ごまを加えて混ぜ、火からおろす。

6.焼きたての大根を食べやすく切って器に盛り、好みの量の醤油をかけて葉と皮の梅ごま風味を上にのせる。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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