レシピ

揚げ方でさつまいもの甘さや食感が変化します。あなたの好きな味はどれでしょう?

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

いも天の吹き寄せ

いも天の吹き寄せ

同じさつまいもでも、石焼きいもと蒸したものとでは、そのおいしさがまったく違います。焼いても蒸しても煮ても電子レンジで加熱しても火は入りますが、でき上がりの甘み(糖度)は大きく変わります。一体何が違うのでしょうか? それは加熱の温度帯です。温度によって糖度が変化するのです。

さつまいもにはでんぷんを分解して麦芽糖に変える強力な酵素が多く含まれています。この酵素が加熱中に働いて甘みを増やすのですが、その活動は60〜65℃で最も活発になり、上限80℃くらいまで働きます。したがってこの温度帯を長く保つことがポイントになります。

オーブンのように200℃近くの高温で加熱しても、さつまいものように大きなものは熱が内部までなかなか入りません。加えてさつまいもはでんぷんが多いため、中心部まで十分に火を入れでんぷんを糊化(こか。でんぷんが炊きたてのご飯のように糊状になること)させなければなりません。しかし、中心に熱を入れるために高温加熱を続けると表面が黒焦げになってしまいます。

石や焚き火の灰の中にさつまいもを長時間埋めて、ゆっくり加熱する従来からの作り方なら先の課題をすべてクリアしたおいしい焼きいもになります。また、さつまいもは丸のままや大ぶりに切ったほうが栄養の損失も少なく、酵素もよく働き甘くなります。さらに長時間ゆっくり焼いていくことで水分が蒸発し、甘みが凝縮されおいしくなるのです。皮の部分が少し焦げた香ばしい香り、しみ出た蜜が焦げる独特の匂いも焼きいもならではの醍醐味ですね。

最近は専用のいも焼き機や焼きいもモードがついたオーブンなどもできています。しかし、焼きいものためだけに機械を買うのも……。

今日は特別な機械や道具がなくても家庭で手軽にできる、石焼きいも顔負けの調理法をお教えします。この方法で料理したさつまいもは、外はカリカリ、中はほくほくで、油分も加わっているのでさらにおいしくなります。

六雁の近所に、てんぷらの名店「てんぷら近藤」さんがあり、親しくさせていただいておりますが、近藤さんの技法を私なりにアレンジしました。今日も野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「いも天の吹き寄せ・さつまいも、じゃがいもの丸揚げ」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・さつまいもは外皮に沿った内皮部分(約5mm厚さ)まで皮をむくことで全体がほくほくした仕上がりになる。「いもきんとん」参照。

・低温で長時間揚げた後、一度油から上げて蒸らす。この工程の間にでんぷんが糖化していもが甘くなる。

温度を上げて二度揚げすることで外はカリカリ中はほくほくにして、食感に“ヘテロ感”を出す。ヘテロ感については「海老いも饅頭あられ揚げ」参照。

・「いも天の吹き寄せ・さつまいものがね揚げ、カリカリ揚げ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・がね揚げは鹿児島県などの郷土料理で、飛び出たいもやにんじんなどがかに(方言で「がね」)の足のように見えることからつけられた。本場のものは衣が重たいが、衣をなるべく薄めにしたほうが軽い仕上がりになり、素材の味や色が生きておいしい。にらを加えることで旨みが増す。

・カリカリ揚げはがね揚げと衣を替え、長めに揚げてカリッとした食感を楽しむ。さつまいもの丸揚げで残った、繊維が多い内皮部分を有効利用してもよい。長めに揚げるためにらは焦げるので加えない。


いも天の吹き寄せ

「いも天の吹き寄せ・さつまいもの丸揚げ」(中央)

【材料(2人分)】
・さつまいも 1本

・天ぷら衣 適量
作りやすい分量:薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個

・揚げ油 適量

・塩 少々

【作り方】
1.さつまいもは両端を切って4cm長さの輪切りにし、厚く皮をむく。

2.天ぷら衣を作る。ボウルに入れた冷水に卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。そこに薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくても構わない。

3.さつまいもに薄力粉(分量外)を薄くまぶして天ぷら衣をつけ、120℃に熱した揚げ油に入れて、温度を維持しつつ時々返しながら40分揚げる。

4.さつまいもを油から上げてクッキングペーパーで包んで15分蒸らす。

5.クッキングペーパーを外して、170℃の油で3分揚げる。

6.表面がカリッと揚がったら油から上げて縦半分に切り、塩を添えてあつあつを供する。

「いも天の吹き寄せ・じゃがいもの丸揚げ」(右)

【材料(2人分)】
・男爵いも(中。1個50gくらい) 2個

・天ぷら衣(さつまいもの丸揚げと同じ) 適量

・揚げ油 適量

・塩 少々

【作り方】
1.じゃがいもはよく洗って、皮付きのまま薄力粉(分量外)を薄くまぶして天ぷら衣をつけ、120℃に熱した揚げ油に入れる。温度を維持しつつ時々返しながら30分揚げる。

2.じゃがいもを油から上げてクッキングペーパーで包んで15分蒸らした後、クッキングペーパーを外して170℃の油で3分揚げる。

3.表面がカリッと揚がったら油から上げて半分に切り、塩を添えてあつあつを供する。

「いも天の吹き寄せ・さつまいものがね揚げ」(右上)

【材料(2人分)】
・さつまいも(4mm角×5cm長さに切る) 30g

・にんじん(3mm角×5cm長さに切る) 8g

・ごぼう(3mm角×5cm長さに切る) 5g

・生姜(太めのせん切り) 5g

・にら(5cm長さに切る) 4g

・天ぷら衣(さつまいもの丸揚げと同じ) 適量

・揚げ油 適量

・塩 少々

【作り方】
1.さつまいも、にんじん、ごぼう、生姜、にらをボウルに入れ、少量の薄力粉(分量外)をまぶす。

2.1に天ぷら衣を適量加え、全体が均一になるよう混ぜる。

3.180℃に熱した揚げ油の中に、2を小さなおたまで静かに入れていく。実際は170℃前後で揚げたいので、油の量にもよるが最初は180℃にしておき、たねを入れた後に170℃になるように火加減を調整する。

4.油の中でたねが広がってきたら、箸で寄せてかにの姿のように形を平らに整える。しばらくしたら裏返す。揚がったら油をよく切って、塩をかけて供する。

「いも天の吹き寄せ・さつまいものカリカリ揚げ」(左下)

【材料(2人分)】
・さつまいも(丸揚げでむいた内皮部分を使ってもよい。4mm角×5cm長さに切る) 30g

・にんじん(3mm角×5cm長さに切る) 8g

・ごぼう(3mm角×5cm長さに切る) 5g

・生姜(太めのせん切り) 5g

・カリカリ揚げの衣 適量
作りやすい分量:強力粉大さじ5、ベーキングパウダー小さじ1、水50cc、とき卵大さじ1

・揚げ油 適量

・塩 少々

【作り方】
1.さつまいも、にんじん、ごぼう、生姜をボウルに入れ、少量の薄力粉(材料外)をまぶす。

2.カリカリ揚げの衣を作る。ボウルに強力粉とベーキングパウダーを入れ均一になるようによく混ぜる。別のボウルに水ととき卵を加え、泡立て器でときほぐして先の合わせた粉を加える。泡立て器でよく混ぜて「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真のような状態にする。ベジタリアンは卵を用いなくても構わない。

3.1にカリカリ揚げの衣を適量加え、全体が均一になるよう混ぜる。

4.衣に粘りがあるためおたまではすくいにくいので、一口で食べられるくらいの量のたねを手で取って平らにかたどる。170℃に熱した揚げ油の中に静かに入れていく。170℃前後を維持するよう火加減を調整して返しながら、カリカリになるまで3〜4分くらい揚げる。揚がったら油をよくきって、塩をかけて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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