レシピ

昆布出汁とかつお出汁でことこと炊くだけのシンプルレシピ。これぞ最高峰のいも料理!

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

海老いもの直煮、翁煮、あんかけ

海老いもの直煮、翁煮、あんかけ

今日は里いもの最高峰である海老いもを直煮(じかに。下茹でせずに炊く)にします。「里いもの煮っころがし、味噌煮」でプロの料理人は里いもを直煮にしないと述べましたが、海老いもだけは別です。下茹でせずに時間をかけてゆっくり炊くとクリーミーな絶品に仕上がります。

海老いもは曲がった形と皮の縞模様が海老のように見えるのでそう呼ばれるようになったといわれます。里いものひとつである唐芋(とうのいも)を土寄せ(つちよせ)という特殊な方法で手間をかけて栽培する上に、味が優れているので高級品として扱われます。

海老いもの直煮、翁煮、あんかけ
海老いもは、その縞模様が海老に似ていることから名づけられた。

では海老いもだけ直煮にするのはなぜか? その食感が粘質ではなく、きめ細かく滑らかで口溶けがよいのはなぜか? それは海老いもの面積当たりの維管束(いかんそく)が少ないからです。維管束とは植物の根、茎、葉まで通っている管のことで、水分や養分などを運んでいます。海老いもの場合、他の里いもと維管束の数が同じだとしても、球茎が大きく肥大しているので単位面積当たりの数が少なくなります。粘りのもととなる粘液管も少ないため、ぬめりや筋が少なくてきめ細かい肉質になるのです。

プロは海老いもをむく際、先の細い部分は大胆に切り落として太い部分のみ皮を厚くむいて使いますが、実はこれも理にかなっています。太い部分と細い部分を比較すると、縦に通る管の総数は同じですから単位面積当たりの管の数は太い部分のほうが少ないのできめ細かく、細い部分は多いため筋張っています。皮に近い部分ほど粘液管が多いため、その部分を除けば粘りも少なく、また、太い部分は成長に伴って細胞間に隙間が多数形成されるため柔らかいのです。先達の料理人たちは、それを顕微鏡で見たのではなく、経験で知っていました。

海老いもが里いもの最高峰だということがおわかりいただけたでしょうか。最高の持ち味を引き出す調理をして、“最幸”の野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「海老いもの直煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・先の細い部分を思いきって落とし、皮も分厚くむくことで溶けるように滑らかな食感が堪能できる。細い部分は別の料理で使えばよい。

・下煮する段階では昆布出汁を使う。かつお節の出汁を最初から使うとかつお節の香りが飛ぶ上に苦みが出る場合がある。

海老いもの直煮は炊きたてを味わうため、通常の煮もののように炊いた後、味を含ませる工程がない。そのため煮汁の調味をあえて強くしている。残った煮汁は肉じゃがや筑前煮などに再利用できる。

・翁煮(おきなに)に添えているおぼろ昆布は旨みを、あんかけに添えている揚げ白板昆布は旨みと油分を添え、海老いもをよりおいしくする。


海老いもの直煮、翁煮、あんかけ

「海老いもの直煮」(写真手前右)

【材料(3人分)】
・海老いも(中) 3個

・昆布出汁 1500cc

・削り節 20g

・日本酒 100cc

・砂糖 60g

・塩 5g

・薄口醤油 小さじ2

・柚子 少々

【作り方】
1.海老いもは洗って細い部分を思いきって切り落とす。反対側の丸い先の部分も1cmほど切って、皮を5mm以上の厚さでむく。

2.沸いたら弱火にして、途中で水分が蒸発し、海老いもが出汁から出そうになったら昆布出汁をたしつつ、30〜40分くらい柔らかくなるまで静かに炊く。

3.ガーゼ(クッキングペーパーでもよい)を広げた上に削り節をのせて包み、柔らかくなった2の海老いもに落し蓋のように上からのせる。削り節の旨みを加えると同時に、海老いもが空気に触れて変色するのを防ぐ効果がある。

4.さらに20分くらい炊き、削り節の旨みが煮汁に十分出たところで日本酒と砂糖を加える。さらに30分ほど炊いたら塩を加えて20分くらい炊く。薄口醤油を加え10分炊いたら炊き上がりとなる。

5.海老いもを煮汁から上げ、大ぶりに切る。溶けるように柔らかいので小さく切らない。器に盛り黄柚子の皮の部分のみを細いせん切りにしたものをのせて供する。

「海老いもの翁煮」(写真手前左)

【材料(3人分)】
・海老いもの直煮 1.5個

・おぼろ昆布(とろろ昆布でもよい) 少々

【作り方】
炊きたての海老いもの直煮におぼろ昆布をのせて供する。

「海老いものあんかけ」(写真上)

【材料(3人分)】
・海老いもの直煮 1.5個

・銀あん 約230cc
出汁200cc、塩1g、薄口醤油小さじ1/4、水溶き葛(葛粉1:水2。片栗粉でもよい)30cc

・白板昆布(あんかけ用) 少々
白板昆布に関しては「パプリカの昆布押し、味噌漬け」参照

・結び昆布(好みで) 3本

・そば米(好みで) 少々

・揚げ油 適量

【作り方】
1.銀あんを作る。鍋に出汁を注ぎ火にかけて調味料を加え沸いたら弱火にする。水溶き葛を加えてよく混ぜ、粉臭さがなくなるまで30秒ほど炊く。

2.白板昆布は幅5mm長さ4cmに切り160℃の油で揚げる。結び昆布、そば米も160℃の油で揚げてクッキングペーパーに広げて余分な油を除く。白板昆布、結び昆布、そば米の全てをつけなくてもよい。お好みで。

3.炊きたての海老いもの直煮に銀あんをかけ白板昆布をのせて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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