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朱塗りの漆器に映える、秋の味覚。栗や松茸、柿を楽しむ今月の「おもてなし膳」

2021.10.25

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

10月の野菜本膳、焼き松茸と春菊のひたし


10月の野菜本膳、焼き松茸と春菊のひたし

今日は10月の野菜本膳を紹介します。9月〜10月にお教えしたレシピを中心に、秋の紅葉にかけて金縁朱塗りの本膳皆具に盛りました。

献立は飯:栗飯、汁:焼きかぶと葉の味噌汁、平椀:焼き松茸と春菊のひたし(本日紹介します)、坪椀:柿なますになります。今日は平椀の一品、焼き松茸と春菊のひたしをご紹介しましょう。


その前に今回使いました朱塗りの漆器についてお話しします。漆器は日本では縄文時代から作られており、古代の人々は触るとかぶれる漆に邪悪なものを寄せ付けない特別な力があると信じていました。そして、発掘されたその時代の漆器のほとんどには赤い漆が塗られていたのです。

赤、つまり朱色は魔を払う力がある色とされ、その後も朱を用いた器は儀式の場などに用いられ、位の高い人々しか使うことが許されませんでした。漆器が一般に普及した中世以降も、朱は高貴な色としてその使われ方に決まりがありました。

お椀やお膳に関しても総朱(そうしゅ。すべて朱塗り)が男性用、黒内朱(くろうちしゅ。外が黒で内が朱塗り)が女性用という使い分けがあったようです。お食い初め膳では今も朱色が男児用、黒色が女児用とされています。私が子供の頃は、赤は女の子の色などと言ったものですが(笑)。これらは古い時代の慣例の名残で、今はなんの縛りもありません。朱塗りの器を皆で楽しみましょう。

今回、紹介する焼き松茸と春菊のひたしも、朱塗りの器に引けを取らない華やかな器に盛りました。赤地と萌黄(もえぎ)地の金襴手向付(きんらんでむこうづけ)に、盛りつけ方を2通り替えて、すべての読者に献上いたします。野菜料理をお楽しみください。


ちょっとしたコツ


・「焼き松茸と春菊のひたし」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

松茸は香りが飛ばないように短時間で焼くことが重要。しかし、焦がしてしまうと松茸の風味を邪魔するので注意。グリラーやオーブントースターで焼く場合は予熱しておく。

日本酒をふりかけて焼くとパサパサになりにくい。

春菊のひたしは先に用意しておき、焼きたての松茸をあつあつのまま合わせてすぐに供する。冷めると松茸の風味が弱まる。







「焼き松茸と春菊のひたし」


10月の野菜本膳、焼き松茸と春菊のひたし

【材料(2人分)】
・松茸(中) 2本(約60g)

・日本酒 少々

・塩 少々

・春菊(葉のみ) 1パック(約60g)

・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合

・菊花(お好みで。黄、紫) 各1/2輪

・土佐酢 適量
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合

・割りポン酢(市販のポン酢1:出汁1) 大さじ2

【作り方】
1.松茸は石づきの土がついている部分だけを鉛筆を削る要領で薄く削ぎ落とす。香りが大切なのでなるべく水で洗わず、濡らしたキッチンペーパーなどで汚れを拭くくらいに。汚れがひどい場合や乾燥していて落ちないときはボウルに水をため、つけるのではなく湿らせながら、指先で優しく洗う。洗い方は「松茸の佃煮、吸いもの」のひと目でわかるプロセス&テクニックを参照。

2.春菊は葉をちぎって茎と分ける。葉はさっと茹でて冷水に放し、冷めたらざるに上げ水気を絞る。一口大に切ってボウルに入れ美味出汁を適量注いで洗う。「春菊の浸し」参照。

3.菊花はお好みで、彩りとして使う。1枚1枚の花びらの先にある種子になる部分と花の真ん中(花びらが短い部分)は苦いので取り除く。鍋に湯を沸かし、酢(材料外)を少々入れる。菊花を鍋より口径の小さなざるに入れて、ざるごと湯に入れる。花びらが浮いてくるので箸でかき混ぜながら、30〜40秒食感が残るようにさっと茹でる。茹で上がったら冷水に放し、風味と香りが抜けないように冷めたらすぐにざるに上げ、水気を軽く絞り、土佐酢に漬ける。「菊花椀、菊梅雑炊」参照。

4.松茸は火が通りやすいように笠部分に包丁を入れ縦に半分に割いて、日本酒をふりかけ薄く塩をする。予熱したグリラー(オーブントースターでもよい)に入れてしんなりするくらいまで一気に焼く。

5.汁気をきった春菊と焼きたての松茸を食べやすく切り、器に盛って割りポン酢をかけ、土佐酢を絞った菊花を彩りに添える。松茸が冷めないうちに供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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