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たっぷり作って保存もできる。栗の風味が生きている、おいしい蜜煮を我が家で

2021.10.15

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

栗の蜜煮、田舎煮


栗の蜜煮、田舎煮

今日は栗を蜜煮にします。プロの料理人は栗を蜜煮にする際、先にくちなしの実を使って黄色く染めます。市販の瓶やパックに詰められた甘露煮もそうですね。市販のものは栗を漂白した後に染めているので透き通った黄色です。

栗はそのまま茹でると可食部が薄い灰黄色になり、裏ごしすると薄茶色になってしまいます。それが自然な色なのですが、昔は料理でも色鮮やかなものが好まれ、栗に限らず食材を着色する傾向がありました。おせち料理に欠かせない栗きんとんは金団という字を当てることもあり、いまだに黄色くすることが多いです。洋菓子のモンブランも今は自然な色のものが主流ですが、昔は黄色でした。今回は黄色い栗とそのままの栗の2種類の蜜煮を紹介します。


栗や慈姑(くわい)などを染めるのに使うくちなしの実は、天然色素として古くから料理に使われてきました。真っ白な花が咲くくちなしの実が濃い橙色というのも不思議ですね。その色素は水溶性なので、栗を茹でる際に実を入れると栗が黄色く染まります。

しかし、くちなしの実を入れさえすればよいというものではありません。プロでも実践している人は少ない大事なポイントがあるのです。それを今日は読者の皆さまだけにお教えします。

染めるか否かは自由ですが、家庭で栗を炊けば市販の甘露煮とは違って風味豊かなおいしい蜜煮ができるのは間違いありません。上質のものが手に入る期間は限られています。蜜煮はたっぷり作って保存もできます。生栗を使って、今この時だけの野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「栗の蜜煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。

◎︎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・通常はくちなしの実にペンチなどで割れ目を入れ、皮ごと栗の茹で湯に入れて色をつけるが、あくまで溶け出して色が濁る。前日から皮をむいたくちなしの実を入れて、色素を溶け出させた水で栗を茹でると綺麗に染まる。炊くのは短時間でよく、時間をかけて冷ます過程で栗の細胞に色が入っていく。

「栗の田舎煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎︎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

色を気にせずおいしさ重視で炊くことから田舎煮と呼ぶ。

・揚げたむかごを一緒に炊くことで、油分がほのかに加わり味に奥行きが出る。

・蜜煮は味を十分に含ませた後に食すが、田舎煮は素材の風味が残り、ほくほくした状態の栗の表面に、葛をひいた煮汁を絡めてできたてを食べる。

・柚子の皮をすりおろしてふりかけることで香りを纏い、名前に反して洗練された風味になる。







栗の蜜煮、田舎煮

「栗の蜜煮(左)」


【材料(2人分)】
・栗(鬼皮と渋皮をむく) 150g 皮のむき方は「栗飯」参照。

・クチナシの色素が溶出した水 450cc
クチナシの実5個、水450cc

・水 250cc

・日本酒 50cc

・砂糖 150g

・濃口醤油 3〜5cc

・ポン菓子 少々

【作り方】
1.くちなしの実はやっとこやペンチではさんで割れ目を入れ、手でむいて中身を出す。分量の水につけて一晩おき、色素を溶け出させる。くちなしの実は、水の量を最初の半分にしてつければもう一度使える。水に色素があまり出ない場合は、栗を茹でる際に、つけていたくちなしの実も2個ほど加えるとよい。

2.鍋に栗とくちなしの色素が出た水を入れて火にかける。沸いたら弱火にして20分ほど炊いて火から下ろし、そのまま2時間ほどおいてゆっくり冷ます。

3.別の鍋に水、日本酒、砂糖を入れて火にかけて、一度さっと洗った2の栗を加える。沸いたら弱火にして20〜25分ほど炊き、最後に濃口醤油を加えて火から下ろし、2時間以上味を含ませる。
4.栗を器に盛り、ポン菓子を散らして供する。

「栗の田舎煮(右)」


【材料(2人分)】
・栗(鬼皮と渋皮をむく) 50g 皮のむき方は「栗飯」参照

・ぎんなん(殻と薄皮をむく) 20g

・むかご 20g

・揚げ油 適量

・昆布出汁 250cc

・日本酒 100cc

・砂糖 10g

・濃口醤油 8cc

・水溶き葛(水2:葛粉1で溶く。片栗粉でもよい) 適量

・柚子 少々

【作り方】
1.栗を1/4〜1/6等分に切る。

2.むかごはよく洗って、皮付きのまま180℃の揚げ油でさっと揚げる。皮は無理にむかなくてもよいが、むくのであれば熱いうちにむくとむきやすい。直径が1cm以下のものであればそのまま、1cm以上であれば半分に切る。ぎんなんは小粒であればそのまま、大粒は半分に切る。

3.鍋に昆布出汁と調味料を入れて火にかけ、栗、むかご、ぎんなんを加える。沸いたら弱火にして10〜12分ほど炊き、水溶き葛を少しずつ加えて好みのとろみにする。粉臭さがなくなるまで2分ほど炊いて火からおろす。あつあつの状態で器に盛り、柚子の皮部分をおろし金で削り、先を切った茶筅でふりかけて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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