レシピ

花がもつ生命力をいただく、重陽の節句を祝う美しい菊料理レシピ

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

菊花椀、菊梅雑炊

菊花椀、菊梅雑炊

今日9月9日は重陽の節句、菊が咲く頃に行われるので菊の節句とも呼ばれます。

昔の風習では菊の花を酒に浸し、香りを移した菊酒を飲んだり、蒸した後に乾燥させた菊の花びらを使って料理に使用していました。菊は仙境に咲く霊薬として、邪気を払い長寿の効能があると信じられていたようです。

今では菊を家庭で食べる機会など、滋賀県や東北という食用菊の産地以外ではほとんどないかもしれませんね。

現在、日本で食用花(エディブルフラワー)は、菊をはじめとして、菜の花、カリフラワー、ふきのとうなど、案外たくさんの種類があります。また、花食文化は日本だけでなく朝鮮半島、メキシコ、イタリア、タイなどでも見られ、風流としての花食、健康志向からくる花食、そして花が持つ神聖な力や生命力を自分の体に取り込んで再生したいという願いなど、日本の菊食に共通する部分も多いようです。

菊花椀、菊梅雑炊

重陽の節句には、他にも「被綿(きせわた)」(菊の花に真綿を被せて翌朝に菊の香りと露を含んだ綿で顔や体を拭いて無病息災を祈る)や「菊湯・菊枕」(菊を浮かべた菊湯に入ったり、乾燥した菊を枕に詰めて眠る)などの行事もありました。

食には体を満たす食と心を満たす食があります。栄養摂取も大事ですが、たまには、風情を食すというのもいいのではないでしょうか。今日も野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「菊花椀、菊梅雑炊」は、野菜料理をおいしくする7要素中4要素をクリア。

◎旨み ◎塩分 甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

菊花の特徴は、色彩はいうまでもないが、食味としては風味、香りと歯ごたえ

菊花には苦みやえぐみがある。茹でて長めに水にさらせば抜けるが、同時に香りも抜けてしまう。そこで、特に苦い1枚1枚の花びらの先にある種子になる部分と、花の真ん中の花びらが短い部分を除く

・黄菊、紫菊ともに花びらは酢を少々加えて茹でると色が鮮やかになる。


「菊花椀」

菊花椀、菊梅雑炊

【材料(2人分)】
・菊花(黄) 1輪

・小かぶ(直径4cm) 2個

・春菊 適量

・出汁 300cc
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい

・塩 0.5g

・薄口醤油 小さじ2

・みりん 小さじ1

・吸い物出汁 約540cc
出汁540cc、塩0.9g、薄口醤油9cc、日本酒9cc

【作り方】
1.小かぶは葉と茎の部分を切り取り、りんごの皮をむくように、外皮を少し厚めにむく。次に蒸し器で柔らかくなるまで10分ほど蒸す。蒸し器がなければ茹でてもよい。

2.鍋に出汁を注ぎ、蒸した小かぶを入れて火にかける。沸いてきたら調味料を加えて弱火で10分ほど炊いて火から下ろす。

3.菊花の1枚1枚の花びらの先にある種子になる部分と花の真ん中(花びらが短い部分)は苦いので取り除く(「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照)。

4.鍋に湯を沸かし、酢を少々入れる。菊花の1/4を残し、残りの3/4を鍋より口径の小さなざるに入れて、ざるごと湯に入れる。花びらが浮いてくるので箸でかき混ぜながら、30〜40秒食感が残るようにさっと茹でる。

5.茹で上がったら冷水に放し、風味と香りが抜けないように冷めたらすぐにざるに上げ、水気を軽く絞り、ボウルに入れておく。

6.春菊は柔らかい葉の部分をむしり取り、さっと茹でて水に放し、水気を軽く絞って適宜刻んでボウルに入れておく。

7.吸い物出汁を用意する。熱い吸い物出汁の一部をボウルに入れた菊花と春菊に注いで下味をつけながら温める。

8.椀に小かぶを盛り、その上に汁気を絞った春菊を丸めてのせる。吸い物出汁に菊花の汁気を絞ったものを加えて温め、沸く直前に火から下ろして椀に注ぐ。仕上げに生の菊花を浮かべて蓋をして供する。

「菊梅雑炊」

菊花椀、菊梅雑炊

【材料(2人分)】
・菊花(黄) 1輪(下茹でまでは「菊花椀」と同様)

・出汁 500cc
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい

・塩 0.5g

・薄口醤油 小さじ2

・みりん 小さじ1

・梅干し(中) 1個

・白飯(炊いたもの) 1/2合分

【作り方】
1.鍋に出汁を注ぎ、梅干しを加えて火にかける。沸いたらごく弱火にして梅干しの風味が出汁に移るように5分ほど炊いて火から下ろす。

2.菊花を茹でて、水気を絞る。

3.白飯はざるに入れて、水をためたボウルに入れ、粘りをさっと洗い流して水気をきる。

4.1を再び火にかけて沸いてきたら調味料と白飯を加えて味を整える。再度、沸いてきたら、菊花を加えて、梅干しと共に器に盛る。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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