レシピ

素手で混ぜるのには意味がある! 我が家ならではのぬか床を育てましょう

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

夏野菜のぬか漬け

夏野菜のぬか漬け

免疫力を高めるには発酵食品がよいとよく聞きます。日本は気温や湿度が発酵に適していたため、古くから多くの発酵食品が誕生しました。味噌、醤油、酢、納豆、漬けもの、ぬか漬けなどです。
発酵食品を食べると腸内細菌の働きが活発になるようですが、発酵食品内の細菌がそのまま腸に定着するのではないそうです。人は胎内では無菌状態で、出産と同時に多くの細菌に接触して、その中の一部が腸に住みつき共生を始めるといいます。

腸内環境を整える細菌の代表が乳酸菌で、それは親から子へ受け継がれてきたものが多いといいます。女性は乳酸菌の宝庫で、指先から頭まで無数の乳酸菌で覆われているそうです。中でも、授乳中の女性にはフェカリス菌という乳酸菌がおり、赤ん坊を雑菌から守り、その乳酸菌は子の体内にも入っていきます。

さて、前置きが長くなりました。今日はぬか漬けをご紹介します。このぬか漬けの生命線が乳酸菌や酵母なのです。旧家ではぬか床が姑から嫁へと代々受け継がれたという話を聞きますが、ぬか床には代々の女性がもっていた乳酸菌が加わってきたということです。

料理屋でぬか床を担当する者が変わると味が確実に変わります。それは管理の手順や気持ちの込め方にもありますが、新しい担当者の手についている乳酸菌が加わるからなのです。

ですから、ぬか床を混ぜる際にはゴム手袋など使わずに、手をきれいに洗った後(石鹸では乳酸菌は死にません)、ぬか床の状態をじかに手で感じながら、容器の隅々までよくかき混ぜていただきたいと思います。プロでは作れない、あなただけのぬか漬けができます。

さあ、あなたにしかできない野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「夏野菜のぬか漬け」は、野菜料理をおいしくする7要素中4要素をクリア。

◎旨み ◎塩分 甘み 油分◎食感◎香り 刺激

・ぬか床の状況を常に確認し、毎日、朝晩、容器の底まで、手を入れて丁寧にかき混ぜ、新しい空気を送り込む。ぬか床のきめ細かな管理と手入れが重要である。

ぬか床の手入れ」参照


夏野菜のぬか漬け

「夏野菜のぬか漬け」

ぬか床
【材料(作りやすい分量)】
・ぬか(新しいものをざるや裏ごしでふるい、胚芽や米のくずを取り除いて使用する) 1kg

・昆布出汁(一度沸かして冷ましておく) 1L

・生ビール(酵母が濾過されていないもの) 100cc

・自然塩 100g

・唐辛子(刻む) 2本分

・洋からし 20g

・山椒の実(ゆでて干したもの) 18g

・くず野菜(キャベツの外葉や切れ端、大根やかぶ、にんじんの皮・尻尾・葉など。なすなどあくの強い野菜は避ける) 適量

※ぬか床に適した容器は、陶器の甕、ほうろう(ほうろうが剥がれていないもの)の蓋付き容器、ガラス製の蓋付き容器。

※プラスチック製の容器は乳酸により溶ける可能性があるので使わない。

【作り方】
1.昆布出汁に塩を溶かしておく。

2.消毒した大きいボウルに昆布出汁と塩以外のすべての材料を入れてよく混ぜ合わせる。そこに昆布出汁を少しずつ注ぎ、まんべんなく混ぜ合わせる。手でぬかを握った際に、指の間から水分がにじむくらいが目安。熟成したぬか床が別にあれば、この時に混ぜ合わせる。

3.よく洗い熱湯消毒した蓋付きの口の広い容器に2を移し、野菜についている菌を種菌とするため、くず野菜を混ぜ込む。手のひらでぬかを押して中の空気を抜き、表面を平らにならし、容器に蓋をする。

4.ぬか床がなれるまで、毎日、朝晩、ぬか床を混ぜる。漬けたくず野菜は2~3日で引き上げ、新しいくず野菜を漬け直す。

5.4を何度もくり返してぬかを発酵させる。夏場は2~3週間前後、冬場は1か月くらいで、菌が繁殖し、発酵も進み、ぬか全体がモワッと膨らみ、黄金色になってきたら、野菜を漬けるぬか床として使える。

ぬか漬け
【材料(作りやすい分量)】
・きゅうり 適量

・なす 適量

・水なす 適量

・小かぶ 適量

・みょうが 適量

・練りからし 適量

【作り方】
1.きゅうり、みょうがはそのまま塩をする。なすと水なすは枝付きのほうをがくの下で切り、縦半分に切り塩をする。小かぶは茎を切り落として薄く皮をむき、大きさにもよるが2つ割りにして塩をする。

2.野菜に塩が浸透したら、水分を拭いてぬか床に漬ける。漬かり具合は好みにもよるが、半日~1日で漬かる。

3.水なすは金気を嫌うので、包丁で切れ目だけを入れて手で縦に裂き、からしをつけて食べるとおいしい。他の野菜は食べやすいように包丁で切って供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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