連載

最終回-菊乃井・村田吉弘【日本のこころ、和食のこころ】十二月 歳暮 

村田吉弘 和食のこころ

二年続いた連載も今回が最終回です。
年の仕舞いとなるこの時期。料理店はお正月仕込みに大わらわ。
一年をきっちりと締め、来年もいい年になるように。昔ながらのしきたりを守ることも大切ではないでしょうか。

十三日は事始め。芸舞妓だけではなく、
料理人も棒だらや黒豆をもどし始める時分となります

菊乃井 村田吉弘 和食の心

北大路魯山人作の織部鉢に海老いもと棒だらを盛って。取り皿には明の赤絵鉢を。今では作る家庭は減ったが、海老いもと棒だらの炊いたんは、京都のお正月料理に欠かせない一品だ。

皆さんはお世話になったかたにお歳暮、贈ってますか? 最近はいわゆる盆暮れのご挨拶いうのんは、はやらないようですね。贈るほうも、いただくほうも面倒やそうで。そやけどお歳暮というのはただものを贈るということではないんです。それは「あなたのことを考えています」ということ。

そういえば長いこと会うてへんけどお元気だろうか? 何がいいやろな。何やったらよろこんでくれるかな。いただいたほうも無沙汰を心の中で詫びながらお礼状をしたためる。そういった人と人とのかかわり、心の通い合いがお歳暮という風習の中には込められている気がするのです。昔ながらのしきたりというものは、やっぱりなくしたくないと思いますね。

十二月十三日は事始め。もともとはこの日からお正月の準備を始めるのでこの名がついたとか。商家や花街で分家から本家へ、お弟子さんからお師匠さんに、一年間お世話になったお礼に鏡餅を持って伺う日でもありました。

最近はニュースで有名になりましたが、祇園甲部の芸舞妓が京舞井上流のお家元、井上八千代師宅にご挨拶に伺いますよね。稽古場に鏡餅がずらっと飾られ、そら師走らしい賑々 しく華やかな様子です。僕ら料理人にとってはこの十二月十三日は一年でいちばん忙しい時期の始まりです。そう、おせち料理の仕込みが始まるのです。

菊乃井 村田吉弘 和食のこころ

頼 山陽(らい・さんよう)が大晦日の風景を詠んだ詩。忙しく立ち働く細君や使用人に対し、手持ち無沙汰な主人の様子が詠まれている。

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