連載

菊乃井・村田吉弘【日本のこころ、和食のこころ】三月 お彼岸

暑さ、寒さも彼岸まで──。
三月と九月のお彼岸はちょうど季節の分かれめ。家庭での料理も精進で通します。お彼岸にはぼた餅・おはぎを作り、隣近所にもお配りしたものです。家で作るぼた餅は大ぶりで、懐かしい味がします。

粒あんときな粉の素朴なぼた餅。かつては、たいていの家庭で春と秋のお彼岸に作っていた。ぼた餅は仏壇にお供えし、先祖の霊を敬い、供養する。重箱/漆器はたけなか

 

お彼岸になると、母は必ずぼた餅を作ってました。
親戚にも届けるよう、お使いに行かされたものです。

皆さんはぼた餅とおはぎがどう違うか知ってはりますか?おはぎは萩の餅で、あずきのつぶつぶが萩の花に似ているから。ぼた餅は牡丹餅で形が牡丹の花のようだから、と教わりました。いい方は換わりますが実は同じものなんです。まあ、春は牡丹、秋は萩ということで、いかにも日本人らしく、風流ですよね。

おはぎは萩の餅の女房詞ことばで、萩の花ともいったそうです。昔はぼた餅も五色作ったものです。こしあん、粒あん、きな粉、ごま、青のり。子どもの頃はいただくのが楽しみでした。お彼岸の中日はそれぞれ春分の日と秋分の日で祖先を敬い、亡くなったかたを偲ぶ国民の祝日の日となっていますね。

京都はようご先祖さまのお墓参りをします。おじいさんの月命日、おばあさんの月命日、おやじの月命日。これだけでも月に三日ありますな。そのたびにお坊さんもお経を上げにきてくれます。先祖を敬うといった気持ち、ご先祖さまと現世を生きる僕たちとの距離が近いんだと思います。自分が今ここにいるのは過去何万人、何億人ものご先祖さまがいはるから。そう思うと自分の命は自分のものだけではない、ご先祖さまと一緒に命を養うという意識なんです。

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