連載

かまどで炊いて、炭火で焼かれる京都の老舗の焼き豆腐。さて1丁おいくら?

一度食べたら忘れられない炭火焼きの豆腐

「昔は大豆を炊いたあと、かまどに残る『から消し(消し炭)』で焼いていました。今は作る量が多くて、それでは間に合わないため、着火の早い、から消しで火を起こして、普通の炭をくべて焼いています」と入山さん。

入山豆腐店でき上がった焼き豆腐は、焼き加減に個性があって選ぶ楽しみがあります。焼き豆腐(1丁)300円(税込み)。この手間暇で1丁300円は、お買い得です。

昨今の焼き豆腐は表面をバーナーであぶり、焦げ目をつけています。しかし、炭火焼きなら独特の香りがつき、なにより焦げ目がくっきりと出ます。

「からげし(消し炭)を、渋うちわでぱたぱたとあおぎながら、くしにさして焼かはるお焼きを食べかけたら、バーナーでこげ目だけをふきつけたような焼きどうふは、ぜったいにいただけません」(『京の手づくり』)

目の前で焼いている様子を見て、実際に食べてみると大村しげさんの意見にも、うなずけます。

入山豆腐店大豆は富山のエンレイ、滋賀のフクユタカなどを使用しています。「いま、世の中の味の趣向は濃くて甘いものになっています。大豆も同じくですが、私は普通の味を心がけています。京都では味噌汁に入れたり、魚と炊いたりしますから、あまり豆腐の味が濃いと料理に合わなくなるのです」(入山さん)

 

今も大村しげさんの著書を手に来店する方が

インターネットで知ったという外国人観光客まで訪れる入山さんのお店では、話題に事欠きません。最近、関東から京都へ嫁いできたところ、京都の家庭料理の作り方がわからず困っていたなんて奥さまも。その方は大村しげさんの著書を入手して、京都の料理を覚え、本に書かれていた入山豆腐店を訪ねてこられたそうです。

「京都の方でも大晦日に豆腐を3丁買ったお客さんが、『最高でした!』と正月明けにすぐ再訪してくださったことがありました。1日目は京風のお雑煮、2日目は蛤を入れてすましに、3日目は伊勢えびを入れて。と、毎日、趣向を変えれば、焼き豆腐も毎日違った味で楽しめるんですね。ご家族からは『焼き豆腐がよかった』と大好評だったそうです(笑)。近くのホテルの和食の料理長は、うちの焼き豆腐を食べて『びっくりした』と。炊いた後も、香ばしさが残っていたと言ってもらえました」

入山豆腐店

入山さんはご近所の奥さま方との雑談のなかで新しいレシピを仕入れると、ほかのお客さまにも口コミで豆腐の楽しみ方を発信しています。レシピを質問してもらうのは歓迎とのことなので、足を運んだ方はぜひ豆腐料理を教わってみてはいかがでしょう。


入山さんに聞いた焼き豆腐の楽しみ方

・お吸い物に入れる
・鰆や鯛など魚と炊く
・子芋とひろうす(がんもどき)と炊く
・菜の花やきのこ類と炊く
・レンジで温め、田楽味噌をつけて食べる

※入山豆腐店では田楽味噌を90円(税込み)で販売しています。


知れば知るほど奥深い、焼き豆腐の世界。おばんざいで知られた大村しげさんも太鼓判を押した京都のお焼きを、機会があればぜひ一度味わってみてください。

Information

入山豆腐店(いりやまとうふてん)

京都府京都市上京区東魚屋町347(椹木町通油小路北東角)

TEL 075‐241‐2339
営業時間 9時30分~18時
定休日 日曜・月曜

川田剛史/Tsuyoshi Kawata

フリーライター

京都生まれ、京都育ち。ファッション誌編集部勤務を経てフリーライターとなり、主にファッション、ライフスタイル分野で執筆を行う。近年は自身の故郷の文化、習慣を調べるなか、大村しげさんの記述にある名店・名所の現状調査、当時の関係者への聞き取りを始める。2年超の調査を経て、2018年2月に大村しげさんの功績の再評価を目的にしたwebサイトをスタートした。
http://oomurashige.com/

取材・文/川田剛史 撮影/中村光明(トライアウト)

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