美味手帖

ほろほろとほどける食感。「和の栗スイーツ」で秋のティータイムを

エッセイ連載「和菓子とわたし」

「和菓子とわたし」をテーマに家庭画報ゆかりの方々による書き下ろしのエッセイ企画を連載中。今回は『家庭画報』2022年10月号に掲載された第15回、宮本亞門さんによるエッセイをお楽しみください。

vol.14 冬瓜漬け
文・宮本亞門

夏の野菜、冬瓜を使った貴重な琉球王国のお茶菓子「冬瓜漬け」。歴史や未来、いろいろな可能性まで感じさせてくれ、手間ひまをかけた、王国の客人たちへのおもてなしが受け継がれています。今は沖縄でも一ヶ所でしか作られていない和菓子のひとつです。

冷たくしてから薄く切って食すると、ジュワッとした汁が滲み出て、ざらっとした砂糖の感触と混ざり、口の中でなんともジューシーな香ばしさが広がります。抹茶をたてるのも良いですが、カジュアルなさんぴん冷茶などのお茶請けとしても、まさに残暑に最高の逸品です。

私が沖縄に住んでいる頃は、沖縄の伝統や文化に魅了され、そのユニークさに驚きました。やちむんから琉球ガラス、漆器や籠物まで沖縄の作家さんの工芸品を買い集めて、庭の花や木々を取り込んで生け込みをしたりして、独自の沖縄ライフを堪能していました。東京から帰るとその都度、お客様をお招きしました。みなさん、沖縄のユニークさに驚き、恋をし、リピートされます。そんな大好きな沖縄話をネタに、その日の気分に合わせた沖縄の音楽をかけて、シンプルで美しい器に、小さく切った冬瓜漬けをのせて、季節に合ったお茶をお出しします。冬瓜漬けは、さすがに手間ひまをかけて作られただけあって、現代の来客は、先人たちの深いおもてなしを感じられ、さらに話が弾みます。

そして意外だったのが、冬瓜漬けとブルーチーズとのマッチング。那覇市の小さなフレンチレストランのメニューで扱っていたものを食した時、その伝統と現代の思いがけない組み合わせに驚きを隠せず、満面の笑みで唸ってしまいました。それはハチミツもかかっていてカナッペのよう。オシャレでワインのお供としても最適。お陰で大人の会話も弾み、楽しい素敵な夜を過ごさせてもらいました。

和菓子のひとつであるこの琉球銘菓は、時を超え、あらゆる人を幸せにし、そのユニークさで場の空気を和ませてくれるのです。

宮本亞門
2004年、東洋人の演出家として初めてオンブロードウェイにて『太平洋序曲』を手がけ、トニー賞4部門にノミネートされる。主な作品に芝居『金閣寺』、オペラ『蝶々夫人』、アイススケート『氷艶〜月光かりの如く〜』などがあり、ジャンルを問わず国内外で精力的に活動。 文化庁芸術祭賞をはじめ受賞多数。 22年にはミュージカル『カラテ・キッド』をセントルイスで上演し、オンブロードウェイを目指す。近著に『上を向いて生きる』(幻冬舎)。

Information

宗家 源 吉兆庵

表示価格はすべて税込みです。

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