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さつまいもは秋のもの? いいえ、春の初物は香りが良くて、柔らかくて美味なのです

2022.06.16

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

新さつまいもの蜜煮


新さつまいもの蜜煮

新さつまいもが店頭に並ぶようになりました。新じゃがいもはよく耳にしても、新さつまいもは聞き慣れないかもしれませんね。九州などでは5月頃には収穫出荷が始まります。

一般的なさつまいもは収穫した後、温度・湿度などが管理された場所で2~3か月貯蔵して、糖化(でんぷんが糖に変わること)を進ませ、適度に水分が抜け、甘みが強くなってから出荷します。一方、新さつまいもは収穫後すぐに出荷。貯蔵しないため水分が多く、糖度はあまり高くありませんが爽やかな食味です。


新じゃがいも(「新じゃがいもの揚げ煮」)や新玉ねぎ(「新玉ねぎの天ぷら、冷やしうどん」)と似ていますね。新じゃがいもや新玉ねぎが貯蔵物とは調理法が違うように(「新じゃがいもとセロリの黄身酢かけ素揚げ」、「新じゃがいもと里いもの飴かけ」、「新玉ねぎの梅風味椀」、「新玉ねぎのステーキ、焦がし焼き」)、新さつまいもも特徴を生かして料理します。

いもきんとん」や「いも天の吹き寄せ」でもお話ししたように、貯蔵物は外皮に沿った内皮部分(約5mm幅)まで厚く皮をむくことでホクホク、そして色よく仕上がります。一方、新さつまいもは皮が薄くて柔らかく、色も鮮紅色で大変きれいなので皮ごと使い、初物ならではの香りのよさを失わないようにします。

私たちプロの料理人は、この時季、新さつまいもをクチナシの汁で黄色く色づけして、薄甘くレモン煮(写真右)や薄蜜煮にすることが一般的です。鮮紅色と黄色の対比が美しいので、よく前菜などで出されます。

糖度が低い新さつまいもを、甘さを抑えた蜜で炊き、しかもクチナシで色づけしていますから、クチナシとレモンの香りで初物にしかない香りは消えています。見た目だけであまりおいしくありません(笑)。

今日は新さつまいもならではのおいしさを重視した炊き方を紹介します。ポイントは「秋のいり豆腐」でお教えした中上げの技法を使うことです。

蜜で普通に煮つめていくと初物の風味が蜜のほうに溶け出し、逆に蜜の甘みが中まで浸透してしつこくなります。しかし、ある程度甘くないとおいしくありません。

そこでさっと炊いた後に煮汁のみを煮つめて、最後に新さつまいもにからめます。表面には煮つまった蜜がからみ、中身は素材の香りが残った状態で、新さつまいもならではのおいしさになります。

一般的なレモン煮と今回の蜜煮を、メビウスの輪の器に一緒に盛りました。見た目をとるか味をとるか? メビウスの輪には表が裏で裏が表、物質と精神、陰と陽などの意味もあります。さらに無限を意味しますが、限りがないということの意味は「変化し続ける」ということ。昨日より今日、今日より明日と、よりよい野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「新さつまいもの蜜煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・新さつまいもは直径2〜2.5cmくらいの細めのものを選ぶ

下茹でせずに5分ほど蜜で炊いて、蜜のみを別鍋に移して中火で煮つめる。新さつまいもを入れて、仕上げに米油を数滴加えてこくを出す。

・煮つまった濃いめの蜜に、青柚子の香りを加えると軽やかな味になる。







「新さつまいもの蜜煮」(左)


新さつまいもの蜜煮(右)一般的な「レモン煮」。(作り方なし)

【材料(3人分)】
・新さつまいも(直径2〜2.5cm) 2本(170g)

・水 140cc

・日本酒 大さじ4

・砂糖 大さじ5

・濃口醤油 小さじ1/2強

・米油 小さじ1/4

・レーズン 20g

・ポン菓子(好みで) 少々

・青柚子(好みで) 少々

【作り方】
1.新さつまいもは皮付きのまま2cmほどの乱切りにする。水でさっと洗って断面のでんぷんを流してざるに上げる。

2.鍋に新さつまいもと水、調味料すべてを加えて火にかける。沸いたら弱火にして5分ほど炊く。

3.2の鍋から蜜だけを別鍋に移して中火で煮つめる。大さじ2くらいの量になったら新さつまいもを加えて蜜をからめ、煮汁がさらに煮つまったら米油を加えて全体に絡め、続けてレーズンを入れ、混ぜたら火からおろす。器に盛ってポン菓子を散らし、青柚子の皮の部分のみをおろし金で削ってふりかけて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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