レシピ
2022/05/12
プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>
風味豊かで爽やかな刺激が心地よい、生姜とみょうがの新物が出始めました。いずれもショウガ科ショウガ属の野菜で、まるで兄妹のようですね。どちらも大陸から奈良時代に日本に持ち込まれたとされ、香りが強い生姜に男の称「セ」を当て「兄香(せのか。セガ)」、生姜に比べて香りが弱いみょうがには女の称「メ」を当て「妹香(めのか。メガ)」」と呼んだのが転訛(てんか)して、生姜、みょうがと呼ばれるようになったという説もあります。兄妹の香りをそれぞれに色飯で楽しみましょう。
色飯は「枝豆飯」以来、数多く紹介してきましたが、季節の変化と食材に応じて味つけを変えてきました。この連載が始まった7月から9月頃までは「枝豆飯」「とうもろこし飯2種」「蓮飯」「落花生飯」のように、昆布出汁をベースに塩と日本酒だけで調味しました。
10月くらいからは「きのこ飯」「松茸飯」「根深飯」「富貴飯」「たけのこ飯」で紹介したように、昆布出汁に日本酒と醤油、みりんを少量加えて味つけしています。寒くなってくると、醤油味がほしくなるのです。
「栗飯」は秋の色飯ですが、白く仕上げたいのと、塩味のほうが合うので醤油は加えません。真冬の「大豆飯」にはかつお節を使った出汁も加えています。そして4月になると、「豆飯」のように醤油を使わなくなります。
春や夏の調味は塩と日本酒だけです。薄口醤油であっても醤油を使うと味も色も重たくなりますし、素材の野菜にも合いません。
今日はみょうが味噌もお教えします。みょうがを図案化したみょうが紋は、神仏の加護を意味する「冥加(みょうが)」にも通じ、縁起が良い紋とされました。読者の皆さまにこの連載が喜んでもらえているのなら料理人“冥利に尽きる”ですが、“冥加に尽きる”(神仏から見放される)はちょっと嫌だ(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
・「生姜飯」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・新生姜は部位によって堅さが違う。「新生姜の甘酢漬け3種」参照。柔らかい部位を用いる。
・暑くなってきたら、油揚げの代わりに鶏皮(他の料理に使った残りでよい)をカリッと焼いたものを加えると、旨みが増し生姜飯に合う。
・「みょうが飯」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・みょうがはなるべく細いせん切りにする。
・油揚げは通常どおり、みじん切りにして飯と一緒に炊いてもよいが、暑くなってきたらそのまま加えて炊き上がりに除くと、仕上がった飯があっさりしておいしい。
・「みょうが味噌」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・少量の玉味噌は、フライパンで温めると焦げてしまう。電子レンジであらかじめ温めたものをフライパンに加える。
・火が通ったみょうがと生のみょうがの両方が加わることで、メリハリがつくと同時に食感と風味がよくなる。
【材料(3人分)】
・米 2合
・新生姜 80〜100g
・昆布出汁 360cc
・塩 4〜5g
・日本酒 大さじ2
・鶏皮(もも肉、胸肉どちらでもよい) 1枚分
・三つ葉(小口切りにする) 1/3束
【作り方】
1.炊く30分以上前に米をとぎ、10分ほど水につけた後、ざるに上げておく。
2.新生姜はさっと洗う程度で皮をむく必要はない。柔らかい部分を2〜2.5mm角×3cm長さに切る。
3.鶏皮は、グリラーで焦がさないようにカリッと焼く。
4.昆布出汁(飯の炊き上がりの堅さの好みで量を加減する)に調味料を加え、好みの味にする。
5.炊飯器に米と4の出汁、生姜、鶏皮を入れスイッチを入れる。
6.炊き上がったら、鶏皮を除いて飯をふんわりと混ぜて器に盛る。三つ葉の小口切りをかけて供する。
【材料(3人分)】
・米 2合
・みょうが 2〜3個
・昆布出汁 360cc
・塩 4〜5g
・日本酒 大さじ2
・油揚げ 1/3〜1/2枚
【作り方】
1.炊く30分以上前に米をとぎ、10分ほど水につけた後、ざるに上げておく。
2.みょうがはなるべく細いせん切りにする。「みょうがの切り方」参照。
3.油揚げは開いて2枚にする。香ばしさが好みなら、オーブントースターできつね色に焼いて用いる。
4.昆布出汁(飯の炊き上がりの堅さの好みで量を加減する)に調味料を加え、好みの味にする。
5.炊飯器に米と4の昆布出汁、油揚げを入れスイッチを入れる。
6.炊き上がったら、油揚げを除いて飯をふんわりと混ぜて器に盛る。みょうがのせん切りをのせて供する。
【材料(2人分)】
・玉味噌(赤) 大さじ2(25g)
作りやすい分量:赤だし味噌500g、卵黄10個、砂糖200g、日本酒350cc、みりん100cc 「生姜味噌」参照
・みょうが 1個(10g)
・サラダ油 小さじ1/2
【作り方】
1.玉味噌を耐熱容器に入れて電子レンジで温める。
2.みょうがは粗みじん切りにする。
3.フライパンを火にかけサラダ油をひき、2のみょうがの半量を加えさっと炒める。
4.3に玉味噌を加えて混ぜ合わせ、全体がなじんだら火を止め、冷ます。
5.冷めたら器に盛り、残りのみょうがを散らして供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。
榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com
連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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