美味手帖

春だけの期間限定。宝石のような「さくらんぼ」を楽しむゼリー菓子

エッセイ連載「和菓子とわたし」

「和菓子とわたし」をテーマに家庭画報ゆかりの方々による書き下ろしのエッセイ企画を連載中。今回は『家庭画報』2022年5月号に掲載された第10回、ピアニストの横山幸雄さんによるエッセイをお楽しみください。

vol.10 異国の地で気づいた和菓子の魅力
文・横山幸雄

フランスに留学していた頃、練習で疲れた時にいただく甘いものは無くてはならなかった。くたびれて動きが鈍くなった頭が霧が晴れたようにスッキリし、また頑張ってみようかなという気持ちになる。いつの間にか目の前にぶら下げられた人参よろしく、甘いものを目標に練習するようになった気がする。

当時のパリのケーキ類は意外と大雑把な味わいで、よく言えばおおらかで大柄な感じ。甘いもの好きな僕でもひとついただくとかなりヘビーだった記憶がある。そもそも30数年前の一般的なパリの料理は凄いボリュームで、郷に入れば郷に従えがモットーの僕の体型はそのせいで……(笑)しかも食事中のワインと最後のデザートは当たり前で、その時に身体と脳で覚えた習慣は今でも変わらない。いや、変えられない。

ところで、たまに日本からのお客様がいらっしゃると、和菓子をお土産にいただくことがあった。時代の変遷とともに世界中のいろんな垣根が取り払われていくが、当時は料理もお菓子も国によって全くスタイルが異なっていた。日本にいた子供の頃はそんなに和菓子を食べていたわけではないのに、外国でいただく和菓子には懐かしい味わいがあった。洋菓子にはない上品さ、きめ細かさ。

思い出してみると、当時パリ駐在の日本のビジネスマンの知り合いに連れていってもらった日本料理店で、はじめて和食の魅力を認識した気がする。和菓子も然り。身の回りに当たり前にあるものは、それが無い環境になってようやくその素晴らしさに気づくということですね。

その後パリ音楽院を無事卒業し、ショパン国際ピアノ・コンクールの入賞以降本格的な演奏活動中心の生活になると、ほぼ1日1食のサイクルになっていった。緊張感から本番前には食欲が湧かず、終演後たくさんいただき、そうすると翌日もそんなにお腹が空かなくなる。当時の僕の胃袋はフランスサイズだったので、1回の食事でエネルギーや栄養素は十分足りていたはず。

空腹でいただく食事はもちろん美味しいと思うけど、その合間にお茶とともにいただく和菓子は至福。デザートとしていただく季節の果物を使った和菓子はずっと身近。季節のうつろいを感じるとともに、あっという間に1年が過ぎてしまったと感じることも多いような気がする……(笑)

あっ、そうだ、もう「陸乃宝珠」の季節ですね!

横山幸雄
第12回ショパン国際ピアノ・コンクールにおいて⽇本⼈最年少で⼊賞。ショパンやベートーヴェンピアノソナタ全曲演奏会のほか、リストランテペガソやキメラ、ビアンカーラサロン、ライヴ配信「マイハートピアノライヴ」のプロデュース等、音楽界の第一線で活躍する。2022年5月3⽇、オペラシティにてショパン全曲コンサート「⼊魂のショパン」を予定。https://www.yokoyamayukio.net

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宗家 源 吉兆庵

表示価格はすべて税込みです。

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