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春の訪れを告げるたけのこを、たっぷりの日本酒でシンプルに炊き上げます

2022.03.05

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

たけのこの煮もの


たけのこの煮もの

たけのこが店頭に並び出すと春の訪れを実感しますね。「筍(たけのこ)」は竹に旬と書き、旬という字が含まれる唯一の野菜です。たけのこは成長が早く一旬(約10日間)で竹になってしまいます。土から顔を出すか出さないかというときに採らないと堅くなり、食べ頃も一瞬です。

料理屋はおせち料理や年が明けてからの新春の料理(「わらびと新春野菜の酢のもの」参照)にいち早く生の寒たけのこを使いますが、これは地面を温めて早採りするので、旬のものに比べると味が落ちます。


これから出回るものがおいしいたけのこです。水煮は年中売られていますが、生のたけのこは大変短い期間しか食べられません。上手に料理して旬を堪能しましょう。

たけのこは一にも二にも鮮度が命です。これほど鮮度が重要な野菜は他にはそう多くないでしょう。採りたてほどおいしく、掘りたてなら生でも食べられます。

たけのこの煮もの

買ってきたら1分1秒でも早く皮をつけたまま茹でます。茹でる際には米ぬかと唐辛子を用います。大根おろしや重曹を使う方法もありますが、私は現時点では、ぬか湯がきが一番いいように思います。

炊くときの秘伝をお教えしましょう。料理人間の口伝で「たけのこは酒飲み」というものがあります。高級料亭吉兆の創業者、湯木貞一氏も著書に書かれており、それを引用したコピペ的なレシピがネット上に散見されます。「たけのこは酒飲み」というキャッチーなコピーだけを倣って、実質が伴っていないのが残念です。

煮汁に日本酒を多めに大さじ数杯加えるというような話ではないのです。出汁と日本酒を半々にしてたけのこの煮汁にする、あるいは最初に日本酒だけでグツグツ炊いて残っているえぐみを飛ばした後に出汁を加えます。たけのこはただの酒飲みではなく大酒飲みなのです。

掘りたては別として、たけのこはぬか湯がきしてもえぐみが完全に抜けることはありません。茹でた後に水で長時間さらせば抜けますが、旨みも香りも一緒に抜けてしまいます。

そこで、茹でたたけのこを日本酒だけで強火で炊いて、アルコールが揮発する作用で残ったえぐみも一緒に飛ばします。同時に酒の風味と甘みがしみ込み、調味料として甘みをほとんど加えなくてもよくなります。酒がもったいないなら酒と水半々でもよいでしょう。

たけのこが酒飲みならば、たけのこを食べる方も……、今晩は日本酒ですね(笑)。旬(“酒”ん)の野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「たけのこの煮もの」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・掘ってすぐのたけのこはえぐみがなく柔らかいが、時間の経過とともに、旨みのもとになる成分が酸化されてえぐみが増加し、たけのこ自体も堅くなる。

・たけのこを買い求めたらすぐにぬかと唐辛子を加えて茹でる。ぬか湯の中の小さな粒子があくを吸着する。また、ぬかに含まれる酵素にはたけのこを柔らかくし、えぐみのもとになるシュウ酸を溶け出しやすくする働きもある。

・皮をむいて茹でると、甘みや風味が茹で湯に逃げてしまうので、皮付きのまま茹でる。たけのこの皮には、繊維を柔らかくする亜硫酸塩が含まれているので、柔らかく茹で上がる。

・唐辛子自体にはあくを抜く働きはないが、えぐみを感じにくくさせる働き(マスキング効果)があるとされる。

・茹でたたけのこを日本酒だけで(水と半々でもよい)強火で炊いた後に出汁を加えて炊く

たけのこ自体があまりおいしくない場合は、油揚げを入れて油分をたして炊くとよい。







「たけのこの煮もの」


たけのこの煮もの

【材料(4〜5人分)】
・たけのこ(中) 4本

・水 2L

・米ぬか 1〜1.5カップ

・唐辛子(種を抜いて) 2〜3本

・日本酒 250cc

・出汁 750cc

・昆布 4〜5g

・塩 2.5g

・薄口醤油 大さじ2

・みりん 大さじ1弱

・木の芽(山椒の芽) 適量

【作り方】
1.たけのこを茹でる。たけのこは土がついていたら洗い落とし、皮付きのまま穂先を斜めに1/4〜1/3切り落とす。火が通りやすいように、また後で皮をむきやすいように、皮部分のみに縦に包丁を入れる。

2.大きめの鍋にたけのこを入れ、水を注いで米ぬかと赤唐辛子を加え、落し蓋をして火にかける。沸いたら中火にして、たけのこの大きさや鮮度にもよるが40〜60分茹でる。

3.根元の部分を竹串などで刺してすっと入るくらい柔らかく茹で上がったら、火からおろしてそのまま冷めるまで置く。冷めたら皮をむき、残った皮を割り箸などで軽くこそげ取ってさっと水洗いする。根元の堅い部分を切り落とし、縦に半分に切る。味見をし、残っているえぐみに応じて、その後の水にさらす時間(15〜30分)を決める。さらすほど、えぐみと一緒にたけのこの風味と旨みも抜けてしまうので注意。

4.たけのこの水気をきって食べやすい大きさに切る。鍋底一面に敷き詰めてちょうどよいくらいの大きさの鍋にたけのこを並べる。日本酒を加えて火にかけ、強火で沸かす。酒が1/3ほどに減ったら出汁と昆布、調味料を加えて弱火で15分ほど炊いて火からおろす。たけのこを器に盛り、木の芽を添えて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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