美味手帖

ザ・リッツ・カールトン京都で味わう豊かな食体験。話題のシェフズ・テーブルをリポート!

食材そのものを生かし、移ろう季節を表現

シェフズ・テーブル では、移り変わる季節を大切にする京都の文化に着想を得て、1年を72に分けた「七十二候」をテーマに据えています。

この日は第五十七候にあたる「金盞香 (きんせんかさく)」。秋が終わり、冬の訪れを色濃く感じる時季を表現した10品の料理が振る舞われました。

「ゆり根と菊芋のスープ」。雪の中に咲く水仙の花を模した滋味深いスープは1品目にふさわしく、じんわりと優しい味わいで食欲を促してくれる。「キンセンとは水仙の花のこと。花の中央に黄色の杯を抱いているような見た目からそう呼ばれています」

井上シェフの料理に共通するのは食材の特徴を生かし切った味わい。野菜や肉のうまみを巧みに引き出すことで、余計な味つけをせずともおいしく、体に優しい料理に仕上げているのです。

料理の後ろにあるストーリーが味わいを深める

白甘鯛はグリルし、松茸のピュレとともに。魚は鮮度を長持ちさせる神経締めという処理を施した、静岡県焼津市の「サスエ前田魚店」から仕入れた逸品。国内外の一流料理人がこぞって魚を求める名店です。

そして付け合わせは京都の「石割農園」から届いたみずみずしい赤かぶ。シェフとは20年来の関係があり、“オーダーメイドの農業”を行っています。(詳しくは次ページへ>>

赤かぶに火を入れながら、食材や生産者についての質問に朗らかに答える井上シェフ。言葉の端々に生産者への親しみと敬意が表れていた。

それぞれのメニューの背景をシェフから直接聞けるのも醍醐味。どんな人がどのように育てた食材で、どう調理したのか。そのストーリーを知ることで味わいにも深みが増します。

松阪牛のフィレはオープンでじっくりと焼いた後、強火にかけ、最後は炭火で焼き上げる。柔らかくジューシーで、3種のビネガーを使ったソースと付け合わせのハーブでさっぱりとした味わいに。

また、食材を隅々まで使うための技術と、ゲストを喜ばせるアイディアも随所から感じることができました。

ゲスト本位のメニューに思わず笑顔に

それがひときわ表れていたのは、大きな伊勢海老のカツレツ。地元の万願寺唐辛子とフルーツトマトを使ったソースとともに味わいます。

上にかけられているのは海老のみそを粉末にしたもので、フレッシュなソースと濃厚なうまみ、伊勢海老ならではの弾力のある食感が見事にマッチした一品です。

揚げた後に炭火で軽く炙ることで、表面は香ばしく中は熱々に。余計な油を落としてヘルシーに仕上げている。

この料理はシェフズ・テーブルのゲストがきっかけで生まれたもの。「伊勢海老のエビフライが食べてみたい!」というリクエストに応えるための工夫が、新たなメニューへとつながりました。

「料理人の目線でよいと思う料理と、お客さまが喜ぶ料理は必ずしも一致しないことがあります。お客さまの反応を直接感じられるシェフズ・テーブルだからこそ、一人ひとりの細かな希望にも応えたいと思っています」と井上シェフ。そのおもてなしに魅了され、滞在期間を伸ばす人までいるというのにも納得です。

毎回替わるメニューの中でも、定番として提供しているのはフォカッチャ。生地にはその日に出た野菜の端材や皮などをローストして練り込んでいるため、そのつど味わいが異なります。

サステナビリティへの取り組みを象徴するような一品ですが、あくまでシェフが意識するのはおいしい料理を提供するということ。この日はえびいもや玉ねぎの皮のほか、20以上の食材が使われ、豊かな風味を醸し出していました。

進化を続けるシェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue

「様々な分野のプロフェッショナルが集まるホテルだからこその、新しいクリエイションを生み出していきたい」と話す井上シェフ。時には和食の料理長とともに農家へ足を運ぶなど、ジャンルを超えて交流をしているのだそう。部屋に入った瞬間から目を楽しませてくれたデコレーションも、庭師がいるホテルならではの演出でした。

これからも進化していくザ・リッツ・カールトン京都のシェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue。シェフやソムリエとのコミュニケーションを楽しみながら、できたての料理を味わう……コロナ禍の中で遠ざかっていた食の楽しみを思い出させてくれると同時に、一つひとつの食材や、それを育む人と環境に思いをはせるきっかけをくれる、豊かな時間です。

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