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〈野菜おせち第1回〉炒めてから煮込む筑前煮。煮汁を素材にしっかり含ませます

2021.12.17

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

野菜おせち、筑前煮


野菜おせち、筑前煮

お正月まであと2週間となりました。皆さま、おせち料理はどうされますか? この連載も年末で半年になりますが、連載開始時より読者の皆さまに野菜おせちを作っていただくことをもくろんで料理を紹介してまいりました。気づいていた方も多いかもしれませんね(笑)。今日から3日間、これまでお教えした料理を取り入れておせち料理に仕上げます。

第1回の本日は、おせち料理に欠かせない黒豆紅白なますたたきごぼう、田作り代わりの豆かりんとう、そして筑前煮をお重に盛りました。これだけでも十分におせち料理として成立しますし、少し頑張れば作れそうですね。


今日は筑前煮(別名:筑前炊き、いり鶏)を紹介します。もともとは筑前地方(福岡県の北部・西部)の郷土料理でしたが、今や日本中の人が知っている料理になっています。各地域に郷土料理として多くの煮ものがありますが、ここまで全国に広がった煮ものは珍しいですね。学校給食で出されるようになってから日本中に徐々に浸透して、家庭料理の定番になったようです。

私は福岡の隣の熊本出身ですが、両親が子供の頃は祝い事や来客があると、庭で飼っている鶏をしめて、畑から取ってきた根菜類などと油で炒めて甘からく炊いた煮ものを作っていたと聞きました。筑前煮の成り立ちもこのようなものだったのでしょう。

筑前煮は油で炒めてから炊くという点が一般の煮ものと異なります。油で炒めることでこくが出て、具材が油でコーティングされるため炊く際にあくが出にくいといわれますが、もう一つ大きな効果(メイラード反応)があります。

カレーやシチューなどを作る際、先に肉や野菜を油で炒めますね。肉汁を内部に閉じ込めるためとされますが、肉汁が閉じ込められて外に出ないのならばソースはおいしくなりません。肉汁や旨みは間違いなく外に出ています。より大切な目的は炒めることによってメイラード反応(アミノ酸と糖が加熱によって結びついて香ばしさなどを生み出す)を起こさせることです。肉にはアミノ酸が多く、根菜類には糖が多いため反応が起こりやすくなります。鍋にこびりついた旨みをこそげ落として煮汁に溶かし込むことで、おいしいソースや煮ものになるのです。トーストや煎餅の焼き色、ご飯のおこげ、焦げ目のついた焼き魚、飴色のあら炊きもすべてこの反応によるものです。その重要さがおわかりいただけるでしょう。

おいしい筑前煮を作るには油をたすだけでなく、この反応を上手に使うのがポイントです。もう一つ大事なことは素材の旨みと風味が出た煮汁を煮つめて余すところなく具材にからめること。これらのコツを実践すれば間違いなくおいしくなります。家庭料理の定番を得意料理にして野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「筑前煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

ごぼうとこんにゃくは先に軽く下ゆでしてあくを抜く。筑前煮の場合、多少のあくは風味に変わる。

・具材を油で炒める際は最初から多めの油を加えると、メイラード反応が起きにくいので、油がたりなくなってから追加する。

・ベジタリアンでなければ、野菜を炒める際に鶏肉の皮や使い残しの肉などがあれば一緒に炒めるとこくが増し、メイラード反応が起きやすい。

・ベジタリアンの場合は、赤味噌(八丁味噌など)をごく少量加えるとこくが増す。赤味噌にはメイラードペプチドという成分が多く含まれているため。味つけではなく隠し味なのでごく少量でよい。

・里いもなど煮くずれしやすいものは、煮汁を煮つめ始めたタイミングで加える

・煮汁を煮つめていく途中で、野菜に火が入り過ぎて煮くずれると思ったら、鍋の中身をざるにあけて具材と煮汁を分ける。煮汁のみを別の鍋で煮つめて、具材が入った鍋に戻してからめるとよい。この技法については「秋のいり豆腐」も参照。







「筑前煮」


野菜おせち、筑前煮

【材料(5〜6人分)】
・ごぼう 230g

・れんこん 230g

・金時にんじん(西洋にんじんでもよい) 200g

・たけのこ(水煮)200g

・こんにゃく 200g

・くわい 5〜6個

・里いも 200g

・しいたけ 120g

・ふき 60cm

・きぬさや 6枚

・漬け出汁 約200cc
出汁180cc、塩0.3g、薄口醤油12cc、日本酒5cc

・柚子 適量

・サラダ油 大さじ1

・ごま油 大さじ1

・出汁 1L

・みりん 大さじ3

・砂糖 大さじ1

・濃口醤油 大さじ2

・薄口醤油 大さじ1

【作り方】
1.ごぼうと皮をむいたれんこん、金時にんじんは一口大の乱切りにする。こんにゃくは一口大にスプーンなどでちぎるか包丁で切る。鍋に湯をたっぷり沸かして、ごぼう、れんこん、にんじんはそれぞれ2分茹でて水に放さずざるに上げる。こんにゃくは3分茹でて水に放してもみ洗いしてざるに上げる。

2.くわいと里いもは皮をむいて米のとぎ汁で茹でて、水に放して流水の中で表面のぬめりを洗い流してざるに上げる。里いもは一口大に切る。「くわいの煮もの、揚げ煮」 、「小いもの含め煮」も参照。たけのこの水煮は一口大に切って熱湯で1〜2分ほど茹でてくさみなどを除いてざるに上げる。

3.ふきは葉を除き、茎に塩をふって両手のひらで塩もみする。たっぷりの湯で茹でて水に放し冷めたら筋を取って3.5cmに切る。「ぜんまいとふきの煮もの」も参照。きぬさやは筋を取る。15秒ほど茹でて水に放し冷めたら1cm角に切る。ふきときぬさやは漬け出汁に20分以上漬けておく。

4.しいたけは軸を除いて、2〜4等分する。

5.大きめの鍋(すべての具材を入れても容量の半分くらいに収まる鍋)を火にかけ、サラダ油とごま油の半量を加える。油を鍋底全体に広げ、鶏肉の皮や使い残しの肉など(材料外)があれば野菜を加える前によく炒める。ごぼう、れんこん、にんじん、こんにゃく、たけのこ、くわいを加えて木べらで炒める。鍋底に少し焦げ目がついてきたら、残りの油をたしてさらに炒める。野菜に油がなじんだら、出汁と調味料を加えて強火にする。沸いても強火のままで、時々木べらで混ぜながら一気に煮汁を煮つめていく。

6.煮汁が具材すれすれより少なくなったら、里いもとしいたけを加える。里いもを加えたら木べらで混ぜるのではなく、鍋を返しながら煮汁を煮つめ具材にからめる。煮汁が少なくなるに従って火を弱めていく。鍋肌についた煮汁が焦げそうなときは、ぬらして絞った布巾で煮汁を拭き取る。

7.煮汁が大さじ2〜3杯くらいになるまで煮つまったら火からおろして、汁気をきったふきを混ぜて器に盛る。汁気をきったきぬさやを散らし、柚子の皮の黄色い部分だけを細く刻んだものを添える。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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