歴史と心に残る名シーンの続出だったミラノ・コルティナ冬季五輪2026でのフィギュアスケート・チームジャパン。今回の団体戦、個人戦を通じて改めてフィギュアスケートの魅力、日本のスケーターの素晴らしさに心奪われた方も多いと思います。すべての時間が忘れられない煌めきをまとっていますが、特に永遠に語り継いで残しておきたい一瞬を、団体戦編に続き、数々のドラマが生まれた個人戦を振り返ります。
『家庭画報』2026年3月号「冬の祭典、応援企画〜銀盤こそ我が人生」の記事での選手紹介とともに、お楽しみください。
・団体戦の振り返り記事はこちら>>
番狂わせ続出の個人戦。
王者・りくりゅうペア、実力を発揮しての大逆転とニュースター誕生!

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貴重な大会写真をフォトギャラリーで見る>>大波乱となった個人戦。それは、男子シングルから始まっていました。2月9日に行われた団体戦最終日の決戦では、金メダルのアメリカと銀メダルの日本がわずか1ポイント差という僅差で決着。そして地元イタリアが団体戦初のメダルとなる銅メダルを獲得。
まだ熱気が冷めやらぬ11日の男子シングルショートプログラム(SP)では、優勝候補筆頭のイリア・マリニン選手(アメリカ)が4回転フリップ、4回転ルッツ+トリプルトウループのコンボを成功させ、108.16点。この時期たまたま別企画の取材でミラノへ行っていた、家庭画報フィギュアスケートチームの編集部員が、個人戦の男子SPだけ観客席で観戦できたということで、感想が届いていたのですが、「マリニン選手への歓声の大きさに驚きました。4回転アクセルは回避してトリプルアクセルにしたんですね」。身体能力がどれだけ高くても、8日の団体戦SP、9日のFS両方を滑り、さらに11日、14日と1週間のうちに高難度の構成で4回演技を行って、さすがのマリニン選手も体力と気力の充電切れになってしまったのかもしれません……。
世界中が息を呑んだニュースなので、皆さんご存知のことと思いますが、フリースケーティング(FS)でのマリニン選手は同一人物とは思えないほど、崩れてしまいました。FS15位、総合で8位という結果は誰も予想できませんでした。金メダルはSP5位、FSでは難易度を上げて臨んで成功させたカザフスタンのミハイル・シャイドロフ選手が、本番での強さを発揮して獲得。2014年のソチ五輪で銅メダルに輝きながら、18年不慮のトラブルで亡くなった同国のデニス・テン選手が夢見た祖国のフィギュアスケート発展。カザフスタンから大応援団が来ての金メダルと彼の願いが花開いた状況に、目頭が熱くなった方も多いのではないでしょうか。
14連勝中だったマリニン選手が敗れた衝撃は、観客以上にスケーターの皆さんに重くのしかかってしまったのかもしれません。16日に行われたペアのSPでは、“りくりゅう”こと三浦璃来&木原龍一組が得点源のリフトでまさかのミス。木原選手の上から滑り落ちてくる三浦選手を今まで見たことがなかったので、言葉にならないほどの衝撃でした。団体戦の演技では格の違いを見せつけての圧勝でしたが、思いも寄らぬ5位、FSの最終グループに残ることもできませんでした。
手のひらから砂がこぼれていく……というのはこういうことか、と一瞬呆然としましたが、でも!実力差を考えたら、6点差なんてすぐに埋まる。なんといっても団体戦でのFSでは2位に15点差だったのだから、と思い直しました。事実、ここから1日で立て直し、ペアのFS世界歴代最高得点での優勝という、日本中が歓喜した涙の金メダルに輝いたのは、彼らの真の実力と積み重ねてきた絆があったからこそ。今もなお、感動の声が止む気配はありません。
そして、大波乱は女子シングルでも起こりました。フィギュアスケートでは最後の試合になる、20日の女子FS。金メダル大本命であった坂本花織選手が、ジャンプのコンボをミス。わずか一つの失敗が実力が伯仲している中では手痛い失敗に。銀メダルではありましたが、誰にも真似できないトップスピード、軽やかなエッジワーク、ダイナミックなジャンプ。本当に美しいパフォーマンスでした。
そして、この大会で世界を虜にしたのが17歳の中井亜美選手。SPでトリプルアクセルを華麗に決め、満面の笑み。五輪の舞台であんな笑顔を見せて滑るのは、中井選手以外は……いました。金メダルに輝いたアメリカのアリサ・リウ選手。フィギュアスケートを楽しむために、引退を撤回して銀盤に戻ってきた天才少女も、SP、FSともに心から楽しそうに滑っていました。
合言葉のように「楽しい!」を連呼していたこのお二方のメンタルは、最強かもしれません。自分に対しての悔し涙は流しつつ、アリサ・リウ選手をハグして讃える坂本選手には、女王の品格が備わっていました。涙と笑いとたくさんの感動をくれたミラノ・コルティナ冬季五輪のフィギュアスケートはこうして幕を閉じました。
今大会でフィギュアスケートの魅力に気がついたという方、スケーターたちにリスペクトの気持ちを抱いたという方、ぜひ今後、開催される大会やアイスショーへの現地観戦をお勧めします!名解説を楽しめるテレビ観戦も捨て難いですが、氷上を滑るスケートの音や会場での熱気など、体感できる芸術がそこにあります。五輪に出場されたスケーターの皆さん、すべてのアスリートの皆さん、本当にお疲れ様でした。感動をありがとうございました!

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貴重な大会写真をフォトギャラリーで見る>>※日程表記は日本時間です