空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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地上マイクロ波放射計
私たちが日々触れる天気予報や気象情報の精度は、昔と比べて大きく向上しています。しかし、災害のおそれのある
積乱雲や線状降水帯がいつ、どこで発生するのか、正確な予測は難しいのが現状です。今回の記事では、そうした雲の実態解明や予測技術の向上に向けて進められている最先端の研究に迫ります。
現在気象庁は、雲のもとになる上空の水蒸気などを把握するため、気球に観測機器を吊るして空に飛ばす
ラジオゾンデ観測を、通常12時間に1回の頻度で毎日行っています。一方、積乱雲の寿命は、わずか30分~1時間ほどです。急激に変動する雲の発生環境や前兆などを捉えるには、より高い頻度で空を観測する必要があるのです。
こうした課題の解決に向けて、「地上マイクロ波放射計」と呼ばれる観測機器の技術開発が進められています。大気中の水蒸気や酸素など、すべての物体はさまざまな周波数の電磁波を放出しており、これを放射と言います。特定の周波数における放射の強さは物質ごとに異なるため、この違いを利用して複数の周波数の電磁波を解析することで、上空の高度ごとの気温や水蒸気の分布を推定できるのです。受信する時間間隔は、なんと1秒〜数分間隔。高頻度で大気の状態を観測できることが大きな特徴です。
地上マイクロ波放射計を用いた研究例として、夏の晴れた日の午後に中部山地で発生する積乱雲の実態解明が行われています。このような積乱雲に伴って降る雨、いわゆる夕立のピークは17時であり、これに先立って朝から昼にかけて
大気の状態が急激に不安定になっていました。これは日中の地上の昇温と海風の吹き込みによる低い空での水蒸気量の増加が要因であり、これまで臨時のラジオゾンデ観測で3時間ごとでしかわからなかった大気の変化が、地上マイクロ波放射計によって初めて分単位で理解できるようになったのです。
「大気の状態が不安定」について詳しく知る>> 積乱雲や線状降水帯を高い精度で予測するには、これらが発生する前に、いつ、どこで、どのような大気の変動があるかを明らかにすることが重要です。気象庁では、2022年から西日本を中心とする17地点に地上マイクロ波放射計を順次設置し、2024年からは観測データを日々の予報に活用し始めています。私たちの暮らしに欠かせない天気予報や気象情報は、こうした最新の研究や日々の観測の賜物なのです。
写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/三上 萌々 Momo Mikami気象予報士・防災士。テレビ高知アナウンサーを経て、現在はフリーアナウンサーとして「TBSNEWS」のニュースキャスターなどを務める。防災・減災のため執筆や講演等に取り組み、全国のJリーグクラブを巡り、サッカーと気候変動について啓発活動を行う。
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●参考文献/気象庁気象研究所『大気・雲の放射観測研究』URL:https://www.mri-jma.go.jp/Dep/typ/araki/radiometer.html、『地上マイクロ波放射計を用いた夏季中部山地における対流雲の発生環境場の解析』荒木健太郎、村上正隆、加藤輝之、田尻拓也著、『もっとすごすぎる天気の図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)