葡萄食ふ一語一語の如くにて
中村草田男
選・文=夏井いつき(俳人・エッセイスト)デラウェアのような赤紫色の小粒ではなく、シャインマスカットのような眩しい新緑色ではなく、巨峰やピオーネのような紫黒色の大粒な葡萄を思う。一粒一粒を丁寧に外し、皮を剝き、口にふくむ。果肉は甘く香り高く、上質な詩のようでもあり、ほどよい酸味は気の利いた警句のようでもある。
「如く」の直喩は素朴な感動を匂わせ、最後の「にて」は「(一語一語のよう)であって」という断定と余韻を醸し出す。読者である私たちも、葡萄の一粒一粒を堪能するかのように一語一語を吟味し、この句を味わう。
●中村草田男(くさたお) 俳人(1901~83)。高浜虚子に師事。俳句の表記は『中村草田男全集 2』(みすず書房/ 1989年) に準じた。
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