連載「絹糸に託すいのちの輝き」
10月「平和」
日本刺繡・文=草乃しずか(日本刺繡作家)秋の夕暮れ時、近所の子と遊んでいると、「ご飯ですよ~」と、私を呼ぶ母の声が聞こえる……。幼き頃の平和な風景が蘇りました。母の手づくり料理を家族で囲み、その日あったことを話しながら、団らんの時を過ごす。そんな当たり前の日常のひとときが、私の子供心を満たしていたと思います。
家族が語らい、心を寄せ合うことが何より大切で、それが平和の原点だと思います。私と夫は高齢の夫婦ですが、お互いを助け合いながら、いかに自分たちで衣食住をやっていけるか毎日をおままごとのように楽しんでいます。そして、自分の暮らしの中にある平和に感謝し、地域や国を超えて、世界の人々が、普通に家族団らんを過ごせるよう祈るばかりです。

紅葉の季節になると、烏瓜(からすうり)の葉も色づきます。地引きのぼかしで色の変化を、ぬい切りで葉脈をダイナミックに表現します。釜糸でぬい切りにすると烏瓜の艶が出ます。針を進めながら、幼い頃の秋の庭を思い浮かべました。
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