空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
連載一覧はこちら>>
JEFスケール(藤田スケール)
9月は、日本では一年の中で
竜巻の発生数が最も多い時期です。ただ、竜巻などの激しい突風をもたらす現象は規模が小さく、既存の風速計でその風を直接とらえるのは困難です。では、竜巻の風がどれほど強いのか、私たちはどうやって知るのでしょうか。
・
竜巻が発生する仕組みをもっと知る>>その風の強さをとらえる“ものさし”を生み出したのは、実は日本人の研究者でした。シカゴ大学の藤田哲也博士です。 藤田博士は、建物や樹木などに残された被害状況から風速を推定し、竜巻の強さを段階的に表す「藤田スケール」を1971年に考案しました。竜巻そのものを測るのではなく、通り過ぎたあとに残された痕跡から風の強さを読み解くという方法です。藤田スケールはその後、竜巻の強さを表す基準として世界で広く用いられるようになりました。
日本でも長く藤田スケールが使われてきましたが、日本の建築物の被害に十分対応していないことなど、いくつかの課題がありました。そうした中、ひとつの転機となったのが、2012年5月に茨城県つくば市などを襲った甚大な竜巻被害です。
これをきっかけに、気象庁では、日本の建物や構造物の特徴に合った、より精度の高い判定方法の検討が進められました。そして2015年、「日本版改良藤田スケール(JEFスケール)」が策定され、翌2016年から運用が始まりました。
JEFスケールでは、被害を受けた対象を示す「被害指標(何が)」と、その壊れ方を示す「被害度(どうなった)」を組み合わせることで、突風の風速と階級をより高い精度で判定することができます。
階級は、JEF0~JEF5までの6つの段階に分けられ、その値が大きいほど風も強くなります。日本で過去に確認された竜巻はJEF3が最大で、これは3秒平均の風速が毎秒67〜80メートルに相当します。JEF3では、木造住宅が倒壊したり、アスファルトがはく離・飛散したりするほどの威力が想定されています。
竜巻は一瞬で家や車を吹き飛ばすおそれのある、とても危険な現象です。もし気象防災速報(竜巻注意/竜巻目撃)が発表された場合は、気象庁ウェブサイト「竜巻発生確度(竜巻ナウキャスト)」で最新の詳しい分布を確認し、確度が高まっている場合には頑丈な建物内にすぐに避難してください。正しい知識と早めの行動が、自分や大切な人の身を守ることにつながります。
●関連記事を読む
・
雲の底から垂れ下がる漏斗状の雲。見かけたらすぐに避難!・
竜巻はなぜ発生する? どのようなときに危険なのか改めて確認を
写真/NOAA
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
X・
Instagram・
YouTube文/三上 萌々 Momo Mikami気象予報士・防災士。テレビ高知アナウンサーを経て、現在はフリーアナウンサーとして「TBSNEWS」のニュースキャスターなどを務める。防災・減災のため執筆や講演等に取り組み、全国のJリーグクラブを巡り、サッカーと気候変動について啓発活動を行う。
X・
Instagram●参考文献/気象庁『日本版改良藤田(JEF)スケールとは』URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-2-2.html、気象庁『藤田(F)スケールとは』URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-2.html