〔特集〕第19回ショパン国際ピアノコンクール第4位入賞 桑原志織、藤田嗣治と出逢う 初めての美術館リサイタル ご両親の「志を持ってほしい」そして「織姫のように美しく」という願いを込めて志織と名づけられた少女は、たおやかでおおらかな大人の女性に。その人こそ第19回ショパン国際ピアノコンクールにおける日本人最高位に輝いた桑原志織さんです。桑原さんにとって初めての美術館リサイタルに密着、奏でる音色やお話を通して、その人となりに触れました。
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藤田の絵から感じること
──目に見えない色

軽井沢安東美術館は類を見ない美術館だと思います。一人の画家にフィーチャーし、コレクターの審美眼を通してさらに絞られた藤田の作品だけが、蒐集家のご自宅を再現した展示室に飾られている。アーティスティックでありながら、ハートフルな空間で特別な場所だと思います。
この美術館で気づかされたことは、藤田が思った以上にさまざまなテイストの絵を描いていることです。猫の絵は色数が抑えられていて、リアリティそして質感がすごい。白黒ベースなのにカラフルな印象で、視覚情報に惑わされない豊かな色彩みたいなもの、目に見えない色を感じました。
カワイイが渋滞。《猫十態》が壁面に大集合。
音楽の世界では音色という言葉を一般的に使います。音色を変えてとか色彩感が足りない、などとレッスンでいわれたりもします。色と感情はリンクすると思うので、感情的なものを受け取って、それが色彩に変換されるのでしょう。一筆一筆重ねた白黒の絵から色彩を感じとる、見えないものを感じるというのは、色を抑えていればこそ際立ってくるのかもしれません。
また、たくさんの少女の絵がありますが、一枚一枚が違っている。それぞれ個性があるのが面白いですし、なにより藤田の「好奇心」のようなものを強く感じます。
オーナーの安東さんご夫妻と話が弾む桑原さん。
私は未だ30代に入りたてですが、思い返してみると自分の5年前、10年前と比べると何か落ち着いてきている気がします。現実的になることは大事ですがアーティストであるからには、好奇心を失わず「心が動く」先へ向かっていけるエネルギーを保っていきたいと思います。それこそ現実的な自分とそうでない自分からなる「俯瞰の視線」を持って、柔軟に生きていきたいですね。
藤田の魂に触れる
閉館後の展示室で藤田嗣治の絵と向き合った桑原さん。いくつもの戦争、バッシングなどさまざまな苦難を経ながらも、その画家人生において大きな花を咲かせた藤田に思いを馳せる。
桑原さんが興味をそそられた《女の顔》1924年(中央)
美術館を訪れる前は、「乳白色」の裸婦像が桑原さんの持つ藤田作品のイメージだった。が、来訪して作品と相対すると、面相筆で一本一本描き込まれた猫の毛並みや、墨一色でありながら豊潤な色味を感じさせる作品に惹かれるように。「音楽もそうですが、絵もやはり生を見ないとですね」と桑原さん。
桑原志織 (くわはら・しおり)第19回ショパン国際ピアノコンクール第4位入賞。グラモフォン誌に「堂々たる風格と気高さ」と評され国際的注目を集める。ルービンシュタイン国際第2位、エリザベート王妃国際ファイナリスト等、世界の主要コンクールで輝かしい実績を誇る。東京藝術大学を首席卒業後、ベルリン芸術大学にて国家演奏家資格課程を修了。2026/27シーズンはプラハ交響楽団との日本ツアーや欧州の音楽祭へ出演。豊かな物語性と高度な技巧で世界を魅了している。
【桑原志織公演情報】
トマーシュ・ネトピル指揮
プラハ交響楽団 ニューイヤー名曲コンサート
桑原志織さんの演奏によるべートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」を聴くことができる会場は以下のとおりです。
◆2027年1月7日時間:19:00開演
場所:倉敷市民会館
問い合わせ先:岡山県音楽文化協会 086(224)6066
◆2027年1月8日時間:19:00開演
場所:ザ・シンフォニーホール
問い合わせ先:ザ・シンフォニーチケットセンター 06(6453)2333
◆2027年1月11日時間:14:00開演
場所:横浜みなとみらいホール
問い合わせ先:ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212
◆2027年1月13日時間:19:00開演
場所:東京芸術劇場コンサートホール
問い合わせ先:ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212
桑原志織ピアノ・リサイタル
◆2026年12月10日時間:19:00開演
場所:札幌コンサートホールKitara
問い合わせ先:テレビ北海道 011(351)7277
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