〔特集〕第19回ショパン国際ピアノコンクール第4位入賞 桑原志織、藤田嗣治と出逢う 初めての美術館リサイタル ご両親の「志を持ってほしい」そして「織姫のように美しく」という願いを込めて志織と名づけられた少女は、たおやかでおおらかな大人の女性に。その人こそ第19回ショパン国際ピアノコンクールにおける日本人最高位に輝いた桑原志織さんです。桑原さんにとって初めての美術館リサイタルに密着、奏でる音色やお話を通して、その人となりに触れました。
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ショパンと藤田嗣治
──二人に相通じること

私にとって初めての美術館リサイタルでは、アンコールも含め7曲すべてショパンを演奏させていただきました。ピアノは今から100年以上前に製造されたヴィンテージ。古いピアノを弾くのは簡単ではないですが、丹念に調整されていたので、ピアノ自体のポテンシャルを信用して、委ねて、演奏できました。むしろ、私が壊してしまわないかのほうが心配でした(笑)。

演奏していてふと顔を上げると、視線の先に美術館の展覧会ポスターが飾られています。自分が弾いているショパン、見つめる先の藤田……二人に相通じることはなんでしょう。
藤田は大の猫好きとして知られています。一方のショパンはといえば「猫のワルツ」と呼ばれる曲を書いてはいますが、タイトルをつけたのは後世の人。とはいえ、恋人のジョルジュ・サンドは犬そして猫と一緒に暮らしていましたので、ショパンも猫に接する機会はあったでしょうね。
藤田とショパンはフランスにおいては、エトランジェ、異邦人です。藤田は祖国に帰らない、ショパンはずっと戻りたいと思っていたという点では違いがありますが、どちらも「覚悟」が決まっているという点は大きく共通していると思います。自分という存在が周りから見ると異質である世界で、その土地の人たちに認められるのは並大抵のことではありません。「自分を信じる力」を持つことで、初めてできることだと思います。
ショパンも藤田も両方を兼ね備えていたからこそ、名を残す人物となり得たのだと思います。うまくいかなかったらどうしよう、と考えない人間はいません。私自身、二人のようなレベルで覚悟、自分を信じる力は持てません。どうしても恐怖がついてきます。ですから、ショパンも藤田もすごいなと素直に思います。
名器に触れる

折に触れて調律師が細やかに調整している1899年製造の名器の名は「スタインウェイ Model A アートケース」。モダンピアノの最初期に作られたこのピアノはマホガニーを材としており、キラキラと木肌が輝くリボン杢に金属装飾を全面に施した世界で唯一の特注品だ。
桑原さんによると、演奏するときには弾いている自分のほかに、俯瞰して音を聴いているもう一人の自分がいるとのこと。このヴィンテージピアノのクセを我がものとし、サロンの隅々まで包み込むように音を響かせた。
軽井沢安東美術館[2026年7月4、 5日]
リサイタルプログラム
オールChopin プログラム
●ワルツ 第2番 変イ長調Op.34-1「華麗なる円舞曲」
●スケルツォ 第3番 嬰ハ短調Op.39
●舟歌 嬰へ長調Op.60
●ポロネーズ 第7番 変イ長調Op.61「幻想ポロネーズ」
●バラード 第4番 ヘ短調Op.52
●ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調Op.58
●前奏曲 第15番 変ニ長調Op.28-15「雨だれ」 ※アンコール
桑原志織 (くわはら・しおり)第19回ショパン国際ピアノコンクール第4位入賞。グラモフォン誌に「堂々たる風格と気高さ」と評され国際的注目を集める。ルービンシュタイン国際第2位、エリザベート王妃国際ファイナリスト等、世界の主要コンクールで輝かしい実績を誇る。東京藝術大学を首席卒業後、ベルリン芸術大学にて国家演奏家資格課程を修了。2026/27シーズンはプラハ交響楽団との日本ツアーや欧州の音楽祭へ出演。豊かな物語性と高度な技巧で世界を魅了している。
【桑原志織公演情報】
トマーシュ・ネトピル指揮
プラハ交響楽団 ニューイヤー名曲コンサート
桑原志織さんの演奏によるべートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」を聴くことができる会場は以下のとおりです。
◆2027年1月7日時間:19:00開演
場所:倉敷市民会館
問い合わせ先:岡山県音楽文化協会 086(224)6066
◆2027年1月8日時間:19:00開演
場所:ザ・シンフォニーホール
問い合わせ先:ザ・シンフォニーチケットセンター 06(6453)2333
◆2027年1月11日時間:14:00開演
場所:横浜みなとみらいホール
問い合わせ先:ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212
◆2027年1月13日時間:19:00開演
場所:東京芸術劇場コンサートホール
問い合わせ先:ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212
桑原志織ピアノ・リサイタル
◆2026年12月10日時間:19:00開演
場所:札幌コンサートホールKitara
問い合わせ先:テレビ北海道 011(351)7277
(次回へ続く。
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