カルチャー&ホビー

【特別対談、再び】 塩沼亮潤+羽生結弦 流れの中で、生きる(前編)

2026.09.01

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特別対談、再び 塩沼亮潤(大阿闍梨〔だいあじゃり〕)+羽生結弦(プロフィギュアスケーター)流れの中で、生きる 2024年10月号にて実現した、宮城県仙台市・慈眼寺のご住職、塩沼亮潤大阿闍梨とプロフィギュアスケーターの羽生結弦さんによる特別対談「『生きる』意味」。「お二人のお話をもっと聞きたい」といった反響に応え、第2弾をお届けします。再び語り合ってくださったお二人の現在地や心境は? お互いをリスペクトする間柄ならではの深遠なやりとりに加え、羽生さん自らが書かれたQ&Aの回答や世界の平安を祈る塩沼大阿闍梨の今まで、今回もすべての言葉が心に響きます。
羽生結弦さんが慈眼寺を訪れた前回に続き、今回は塩沼亮潤大阿闍梨が羽生さんの練習拠点を訪問。最初は袈裟姿で登場された大阿闍梨だが、「こんなお二人、見たことがない!」写真が撮れる展開に。衣装協力(羽生さん)/グッチ(グッチ クライアント サービス)

羽生結弦さんが慈眼寺を訪れた前回に続き、今回は塩沼亮潤大阿闍梨が羽生さんの練習拠点を訪問。最初は袈裟姿で登場された大阿闍梨だが、「こんなお二人、見たことがない!」写真が撮れる展開に。衣装協力(羽生さん)/グッチ(グッチ クライアント サービス)

今こそ再び聞きたい。
真摯な生き方から紡がれる珠玉の言葉

世界に仏陀の愛を説く 
「大峯千日回峰行(おおみねせんにちかいほうぎょう)」満行者
塩沼亮潤大阿闍梨
対談後、本気の曲かけ練習を披露してくれた羽生さんの演技に思わず拍手する大阿闍梨。「練習を拝見するのは初めて。最高の特等席ですね!」と感激の面持ち。

対談後、本気の曲かけ練習を披露してくれた羽生さんの演技に思わず拍手する大阿闍梨。「練習を拝見するのは初めて。最高の特等席ですね!」と感激の面持ち。

塩沼亮潤 Ryojun Shionuma
1968年3月15日、宮城県仙台市生まれ。福聚山慈眼寺住職。87年吉野山金峯山寺にて出家得度。91年大峯百日回峰行、99年大峯千日回峰行満行。金峯山史上、1300年間に2人目の満行者。四無行、八千枚大護摩供満行。ラジオやYouTubeを通じ、人々に発信中。


美しく、清らかに。降臨した氷の精が舞う
羽生結弦さん
羽生さんが氷に降り立った瞬間、そこは神の領域となった。Mrs.GREEN APPLEの曲に合わせ、リンクを舞う姿に「天から遣わされた存在ですね」と大阿闍梨。衣装協力(P.223、225~226)/リック・オウエンス(イーストランド)

羽生さんが氷に降り立った瞬間、そこは神の領域となった。Mrs.GREEN APPLEの曲に合わせ、リンクを舞う姿に「天から遣わされた存在ですね」と大阿闍梨。衣装協力/リック・オウエンス(イーストランド)

羽生結弦 Yuzuru Hanyu
1994年12月7日、宮城県仙台市生まれ。プロフィギュアスケーター。2014年ソチ五輪、18年平昌五輪連覇。男子シングル史上初のスーパースラム達成など、不世出のレジェンドスケーター。自身が被災した経験を踏まえ、災害からの復興支援を積極的に行っている。

限界まで挑み、世界を極めたお二人ならではの魂の言葉
人生、すべてが因果律。
行い次第だと自覚して、我欲を抑えて生きる

塩沼大阿闍梨と羽生さんの言動に込められた祈り

塩沼大阿闍梨(以下、塩沼) お久しぶりです。2024年10月号の対談では羽生さんが慈眼寺にいらしてくださったので、今回は私が羽生さんの練習拠点にお伺いしました。

羽生さん(以下、羽生)ようこそおいでくださいました。阿闍梨さんとまた、いろいろお話しできることを楽しみにしていました。

「祈りも言動も力ずくで行うと反動がくる。肩に力を入れず、流れの中で生きていきたい」 ―塩沼亮潤大阿闍梨 小学校以来のスケートに挑戦してくださった大阿闍梨。作務衣に着替えて氷の感触を確かめたらヘルメットと手袋を装着。

小学校以来のスケートに挑戦してくださった大阿闍梨。作務衣に着替えて氷の感触を確かめたらヘルメットと手袋を装着。

羽生さんからプレゼントの手袋で「SEIMEI」ポーズ。

羽生さんからプレゼントの手袋で「SEIMEI」ポーズ。

塩沼 羽生さん、お顔が変わりましたね! さらにハンサムになられました。

羽生 いやいや⋯⋯ありがとうございます(笑)。今、充実しているからでしょうか。

塩沼 充実感が溢れていますね。羽生さんは、22年から一人で出演・制作総指揮を担うアイスショーを行われていますが、24年12月と25年2月に公演された「ICE STORY」第3弾『Echoes of Life』では、人生と旅路をテーマに「生きるとは?」「命とは?」といった哲学を主題にされていました。それを経て、何か変化はありましたか?

羽生 「顔が変わった」といっていただきましたが、それが端的な変化なのかもしれませんね。その言葉に、自分でも腑に落ちるところがありました。日々、スケートにおける自分の役割を極めていく気持ちで取り組んでいるのですが、今が最終到達点だと思っているわけではないんです。人生何があるかわからないですし、今の道を歩き続けているうちに、新たな役割の道が開く時がくるかもしれない。でも、スケートを通じ震災からの復興支援に関わるなど、現時点の自分ならではの役割を全うしている手応えがあるからこそ顔が変わってきたのかな、と考えていました。

塩沼 前回の対談時に羽生さんは「今、絶賛変わり中なんです」と話されていましたが、お顔が優しくなりましたよ。

羽生 幸せだと思える方向へ歩みを進められていることに、満足できているからかもしれません。それと同時に改めて思ったのが、こういったプロジェクトがどれだけ多くの人に支えられ、成立しているのかということ。もちろん僕は総指揮を執り、媒体として中心に立って滑ることが役割なのですが、氷やスケート靴、映像や演出など各方面でのプロフェッショナルな方たちが共助してくださるからこそ、自分自身が世の中に広め、残したいと納得できる作品になる。素晴らしい方々と巡り合えたからこその感謝と充実感が、今の顔に表れているのであれば嬉しいです。僕は宇宙から見たらほんの小さな存在ではありますが、『Echoes of Life』を終えて、少しでも空気を振動させられる人間でありたいと思うようになりました。演技中に僕が発した祈りや気が、会場の空気や音を通して皆さんの心に響いてくれたらと願っています。

塩沼 私も祈る存在の一人として祈り繫がりでお話しさせていただくと、年を重ねて自分の祈り方が変わってきたんですよね。昔は肩に力を入れて、渾身の力を込めてやっていたのですが、58歳になった今はほわんと座って「世の中がだんだんといい方向に流れていきますように」って、ほわんと祈る(笑)。祈りの質が変わってきました。

羽生 わかります。鎮魂曲を僕が滑るようになったのは18歳くらいでしたが、当時、背負っていた肩の荷の重さからはだいぶ解放されて滑ることができるようになりました。荷はまだまだ下りてはいないのですが、31歳の今は力で押すより、プログラムをもっと研ぎ澄まして届けたい気持ちです。

撮影/鍋島徳恭 スタイリング/馬場郁雄 ヘア&メイク/岩田麻衣子〈MOC〉 構成・取材・文/小松庸子 撮影協力/アイスリンク仙台

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