空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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変わる気候、変わるワイン
「今年のワインは当たり年だ」そんな言葉を一度は見聞きしたことがあるかもしれません。当たり年になるかどうかを左右する要因のひとつに、その年の天候があります。そして、近年はその天候が変わりつつあり、ワインの味わいや産地にも影響が出始めています。
かつて、ワインの原料となるぶどうの栽培に適した気候帯は「ワインベルト」と呼ばれ、北緯30度から50度、南緯20度から40度の間にほとんどの産地が位置していました。日本では、山梨や長野、北海道がワインの産地として知られていますが、ワインベルトには日本の国土の大部分が含まれます。海外では、フランスのボルドーやブルゴーニュ、イタリアのトスカーナなど、ワインのほとんどの産地が含まれています。一般的に、適度に気温が高く日照量が多いとぶどうの糖度が高くなり、気温がそれほど高くなく日照量も少ないと、糖度がそれほど上がらず、酸が強くなりやすい傾向にあります。このため、同じ銘柄のワインでも、ぶどうが収穫された年の天候によって、味わいに違いが生まれるそうです。
一方、近年の地球温暖化に伴い、世界中のほとんどのワインの生産地では、過去40年の間で収穫時期が2、3週間早まっています。今後も熱波や干ばつ、大雨、遅霜が頻発すると、古くからの産地でぶどうの糖と酸のバランスが崩れたり、着色不良や日焼けが生じたりする恐れがあります。さらに、病気が発生しやすくなる、ひいては収穫自体ができなくなるなどの問題も指摘されています。しかし、日本国内を含め、これまでぶどうの栽培に適さなかった気温の低い地域や標高の高い地域で収穫ができるようになるという側面もあります。変わりつつある天候に合わせ、生産者たちは品種を変えたり、栽培方法を工夫したりするなど、試行錯誤しています。
地球温暖化という大きなスケールの話は実感が湧きにくいかもしれません。しかし、実は目の前のグラスに注がれたワインに影響しているかもしれないと知ると、地球温暖化も身近に思えてきませんか。
写真/PIXTA
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/津田 紗矢佳 Sayaka Tsuda気象翻訳者・気象予報士・防災士。天気や防災をわかりやすく伝える“気象の翻訳者”として活動中。テレビ朝日「スーパーJチャンネル」など出演。絵本『大あらしだ!ハリケーンがやってくる』(福音館書店)の翻訳を担当。
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Instagram●参考文献/国立研究開発法人国際農林水産業研究センター『992. 気候変動によるワイン生産への影響』金森紀仁URL:https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20240405、東北大学『気候変動がもたらすワイン用ブドウの栽培適地の変化』平賀優介URL:https://www.eng.tohoku.ac.jp/news/detail-,-id,3406.html、エーデルワイン工場『ぶどうと温度』「ぶどうと太陽」、日本経済新聞『ワイン産地の9割、気候変動で存続危機 仏研究チーム』URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC011P50R00C24A4000000/、サントリー『ワインの基礎知識』URL:https://www.suntory.co.jp/wine/series/knowledge/taste.html、OIV. (2025, November). World Wine Production Outlook 2025. International
Organisation of Vine and Wine. URL:https://www.oiv.int/sites/default/files/documents/OIV_2025_World_Wine_Production_Outlook_0.pdf