空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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強い降水をもたらす雲
皆さんは、強い雨を降らせる雲にどんなイメージを持っているでしょうか。空にそびえ立つ壮大な積乱雲、また、その背が高いほど地上に強い雨をもたらすというイメージを持つ方も多いかもしれません。
最近の衛星観測データを用いた研究により、実は「極端に強い降水をもたらすのは、背の低い雨雲である」ということがわかってきました。しかもこの結果は、陸上・海上や熱帯・亜熱帯の地域によらず、普遍的な特徴だったのです。このような強い降水は、比較的大気の状態が安定なとき、かつ対流圏全体が湿っているときに起こっているという特徴も見られました。
実際、山地の斜面などでも、背の低い雲で総雨量が多くなることが分かっています。これは、上空から降ってきた雨が、斜面上でできた低い雲の中でより成長し、降水が強まるためです。この仕組みは、上空の雲がさながら雨の種をまいており、低い雲にまかれた種が成長するようにも見えることから、「Seeder-Feederメカニズム」と呼ばれています。2019年10月の東日本台風の際にも、同じSeeder-Feederメカニズムで降水が強まっていたことが報告されています。
雷雨や雹などは背の高い積乱雲がもたらすことは間違いありませんが、雨雲の見た目だけではその雨の強さを判断することは難しいのです。天気予報などで雨が予想される場合は、気象庁ウェブサイト「今後の雨」や最新の気象情報で雨量の予測を確認するようにしましょう。
写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/三上 萌々 Momo Mikami気象予報士・防災士。テレビ高知アナウンサーを経て、現在はフリーアナウンサーとして「TBSNEWS」のニュースキャスターなどを務める。防災・減災のため執筆や講演等に取り組み、全国のJリーグクラブを巡り、サッカーと気候変動について啓発活動を行う。
Instagram●参考文献/東京大学大気海洋研究所『最も強い雨は最も高い雨雲からは降らない ~衛星搭載降雨レーダが明らかにした極端降雨の姿~』URL:https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2015/20150225.html、Royal Meteorogical Society『Modification of raindrop size distribution due to seeder–feeder interactions between stratiform precipitation and shallow convection observed by X-band polarimetric radar』Ryohei Misumi、Yasushi Uji、Takeshi Maesaka URL:https://rmets.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/asl.1034