ふりいでし雨の水輪よ休暇果つ
木下夕爾
選・文=夏井いつき(俳人・エッセイスト)「休暇果つ」は、「休暇明」の傍題で初秋の季語だ。長い夏季休暇が終わることを意味するが、「果てる」と「明ける」では、その心持ちが違う。休暇が終わったアンニュイな気分を匂わせる前者に対し、後者は休暇が明けてからの期待や喜びを窺わせる。
「休暇果つ」が季語だと初めて知った時、フランソワーズ・サガン『悲しみよこんにちは』の世界が浮かんできた。有名なこの冒頭「ものうさと甘さが胸から離れないこの見知らぬ感情」を持てあますかのように、降り出した雨の水輪はしずかに広がっていく。
●木下夕爾 俳人(1914~65)。久保田万太郎に師事。俳句の表記は『定本木下夕爾句集』(牧羊社/1972年) に準じた。
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