空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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観測精神
1945年8月6日、広島市に原子爆弾が投下されました。広島市内で、当時公務にあたっていた方から、原爆投下後の悲惨な様子を聞いたことがあります。その話を思い出すたびに、恐ろしさと言いようのない悲しみが湧きおこります。時代は昭和から平成、令和へと移り変わり、被爆者の経験を直接聞ける機会が少なくなってきていますが、当時の広島の様子や天気を知ることのできる貴重な記録があるのです。
その記録は、広島地方気象台の職員たちによって残されました。当時の気象台は爆心地から約3.7キロメートル離れていたものの、爆風の大きな影響を受け、職員たちは全員が負傷したそうです。しかし、職員たちは「欠測してはならない」という使命感で観測を続けました。そこには、「観測精神」の存在があったようです。観測精神は、中央気象台長を務めた岡田武松の哲学で、同じことが二度と起こらない自然現象を正確に記録することを大切にするものです。欠測すると、データの価値が激減してしまうとも説かれています。
気象観測の連続データは、気候変動を正確に把握したり、予報の精度を高めたりする上でとても重要です。あの夏の観測記録が、現代の天気予報にもつながっているのです。1945年8月の広島の観測記録は、気象庁や広島市江波山気象館のウェブサイトで誰でも確認することができます。当時の気象台の職員たちに、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/津田 紗矢佳 Sayaka Tsuda気象翻訳者・気象予報士・防災士。天気や防災をわかりやすく伝える“気象の翻訳者”として活動中。テレビ朝日「スーパーJチャンネル」などに出演。絵本『大あらしだ!ハリケーンがやってくる』(福音館書店)の翻訳を担当。
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Instagram●参考文献/『空白の天気図』柳田邦男著(文藝春秋)、広島市江波山気象館『原爆と気象台』URL:https://www.ebayama.jp/?page_id=3135、気象庁『広島(広島県)1945年8月(日ごとの値)』URL:https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/daily_s1.php?prec_no=67&block_no=47765&year=1945&month=8&day=&view=、中国新聞『ヒロシマの空白 被爆76年 証しを残す 原爆被災写真 <6> 地方気象台 北勲さん撮影』明知隼二URL:https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=113683