〔特別対談〕五木寛之(作家)×中谷美紀(俳優) 人生の指針──心の赴くままに(中編) 作家歴60年の五木寛之さんが、これまでに対談された人数は新聞や雑誌に掲載された分だけで、なんと約700人。そんな対談の達人、五木さんと今回相対したのは、旅行記やエッセイの執筆もされる、俳優の中谷美紀さんです。自らの心に忠実に生きるお二人には共通する清々しさがありました。
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人生の指針は今、自分が何をしたいか
──かつてがんを患った時期も、毎日休まずコラムを執筆されていた93歳の五木さんと、50歳の節目を迎え、新たな生活スタイルに移行しつつある中谷さん。ぶれることなく、颯爽と我が道をゆくお二人が、人生の指針とされていることとは。中谷美紀さん(以下、中谷) 2026年1月に50歳を迎えて、まさにこれから、五木さんがご著書のタイトルにもされている「林住期」(注・五木さんは同書の中で、古代インドの思想をベースに「人生のクライマックスは(中略)五十歳から七十五歳までの『林住期』にあるのではないか」と述べている)なんです。林住期は好きなことをして生きていいと書いてありましたので、まさに今、私はその準備をしておりまして。オーストリアの田舎で小さな農家を改装しているところです。
将来、日本に戻りたいと思う可能性もありますし、骨を埋めるかどうかはわかりませんが、今は「林住期は自然とともに暮らしたい」と思い、行動しています。ですから、人生の指針といいますか、「好きなように、心の赴くままに」と思っております。五木さんは『大河の一滴 最終章』で、流れに抗って生きると書かれていましたね。
「『林住期』は自然とともに暮らしたい。そのための準備を進めています」──中谷
対談前、「伺ってみたいことがたくさんあるんです」と話していた中谷さん。
五木寛之さん(以下、五木) そうですね。若い頃は革命だとかいろんなことをいって、世の中に抗うわけじゃないですか。それが年をとるにつれてどんどん丸くなってきて、気も弱くなって、もう時の流れに任せよう……て感じになるんだろうけども。しかし、抗いつつ流されていくっていうのも、生き方としてあると思うんですよね。だから、残りの人生をどう生きるかといったことはあまり考えないで、とにかく今やっている仕事を続けていこう、その途上で人生を終えられれば満足。そう考えています。健康に関しては積極的に若い頃に戻そうとは思いません。あなたも健康については結構、問題を抱えていらっしゃるみたいですね。
中谷 股関節については、五木さんと同じ問題を抱えております。
五木 おそらく、股関節や膝の関節については、病院に行って積極的な治療を望めば、手術することになるんでしょうね。今は人工関節も、昔と違って相当いいものができているようですし。でも、僕はやる気がないのです、今は傷ついた体をいたわりつつ、今やっている仕事を続けていくのが夢。
中谷 痛みに対してはお強いほうですか。
五木 痛みは苦手ですけど、悲鳴をあげるようなものではないですから、痛みは痛みで受け入れていくという感じですね。
中谷 痛みでご機嫌が悪くなって、怒鳴ったりする方もいらっしゃるじゃないですか。そうはならないんですね。
五木 ならないです(笑)。それよりも、後期高齢者となった人間が、一生懸命働いている若い人たちに支えてもらうことのほうが、ちょっとつらいところもあるんですよ。ですから、自分なりに最後まで働きたいと思うんです。中谷さんは何歳ぐらいまで生きたいと思われてるんですか?