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「おお」以外の読み方分かりますか?稀少名字「多」のルーツは古代豪族にあります

2026.07.23

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墨アート製作/越智まみ

名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。連載一覧はこちら>>

難読名字:多(おおの)

「多」という名字を見たことがあるでしょうか。これで「おおの」と読む、かなり珍しい名字です。実は知る人ぞ知る古代から続く名家の名字です。

多氏は古代豪族の一つで、古代の大和国十市郡飫富郷(おおごう、現在の奈良県磯城郡田原本町多)という地名に因み、本来の読み方は「おお」でした。初代天皇とされる神武天皇の皇子神八井耳尊(かんやいみみのみこと)の子孫と伝え、『日本書紀』の天武天皇元年(672)の項目に多臣品治の名がみえるなど、古くから栄えた一族です。漢字では「多」の他にも、「意富」「飫富」「大」「太」とも書き、『古事記』を編纂したことで知られる太安麻呂(おおの・やすまろ)も同族です。

さて、この一族の中の多家は楽家として栄えました。楽家とは奈良時代以降、朝廷内で代々雅楽を演奏し伝えている家のことです。


平安時代前期に多自然麿(しぜまろ/じねんまろ)が朝鮮半島から伝わった舞を日本風の右舞(うまい)にアレンジ、中国大陸から伝わった左舞(さまい)と合わせて日本伝統歌舞の一つである神楽の形式を整えることで楽家としての基礎を築きました。

そして、平安後期以降に名手を輩出して繁栄し、以来、代々雅楽をもって朝廷に仕えた楽家の筆頭として今日まで続いています。現在でも子孫は宮中の雅楽を担当しているほか、竹久夢二作詞「宵待草」の作曲家として知られる多忠亮(ただすけ)など、西洋音楽の分野でも活躍しています。

なお、本来「多」の読み方は「おお」なのですが、現在では「おおの」と読みます。この「の」は源頼朝(みなもと・の・よりとも)の「の」と同じで、姓と名前をつなぐ言葉でしたが、次第に名字に取り込まれて「多」だけで「おおの」と読むようになったものです。

・ほかの名字の由来も見る>>


森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。

墨アート製作 書家・越智まみ(https://esprit-de-mami.com/
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