空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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雨の匂い「ペトリコール」
初夏、新緑の木々をしっとり濡らす雨は「緑雨(りょくう)」や「翠雨(すいう)」と呼ばれ、夏の季語として古くから親しまれてきました。これは雨の強さや降り方ではなく、緑に包まれた季節に降る雨であることに着目した言葉です。『歳時記』では、夏雨や青時雨とともに、若葉の美しさを際立たせる情景を表す語として扱われています。
また、雨上がりの公園や庭では、雨独特の香りを感じることがあります。特に雨の降り始めに感じられることのある香りは「ペトリコール」と呼ばれ、ギリシャ語で「石のエッセンス」という意味です。乾いた土に雨が降ることで、植物由来の油のにおいが空気中に広がったものです。ほかにも雨のにおいとして、土の中の細菌が作り出すゲオスミンや、雷によって発生するオゾンも原因の一つと考えられています。
雨に濡れた若葉は色をいっそう深め、森や庭園の景色を鮮やかに変えてくれます。傘を打つ雨音を楽しみながら、季節の歩みを五感で味わってみてはいかがでしょうか。
写真/PIXTA
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/太田 絢子 Ayako Ota気象予報士・防災士・気象防災アドバイザー。これまでNHK松山やCBCテレビにて気象解説を務め、防災気象情報や地球温暖化に関する講演・執筆活動も行う。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。2023年10月よりアメリカ・ロサンゼルスに在住。
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Instagram●参考文献/『角川俳句大歳時記 夏』角川学芸出版編集(角川書店)、『すごすぎる天気の図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)