空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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青嵐
5月から7月ごろ、新緑がまぶしい季節になると、青々と茂った木々の葉を揺らすやや強い風が吹くことがあります。この風は俳句の世界では「青嵐(あおあらし・あをあらし)」と呼ばれ、初夏を表す季語として親しまれてきました。
「嵐」といっても災害をもたらすような暴風ではありません。また、冬に吹く木枯らしのような冷たさはなく、生命力に満ちた季節の風として詠まれることが多い言葉です。気象学的には低気圧に伴って吹くもの、高気圧に覆われているときに一日の温度変化に伴う海陸風(かいりくふう)で吹くもの、近くにある
積乱雲から吹き出す冷気流で吹くものなどが考えられます。
俳人・正岡子規は、この風の情景を
「城山の 浮み上る(うかみあがる)や 青嵐」
と詠みました。新緑の山が風に包まれ、まるで浮かび上がるように見える力強い光景が表現されています。子規はこの「青嵐」を題材にした句を30句以上残しており、新緑の季節に吹く風の印象的な情景をたびたび俳句に詠み込んでいます。
次に強い風を感じたら、ぜひ一度立ち止まって青々と茂る木々を眺めてみてください。その中で、季節が夏へと進んでいる気配が見えてくるかもしれません。
写真/PIXTA
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/太田 絢子 Ayako Ota気象予報士・防災士・気象防災アドバイザー。これまでNHK松山やCBCテレビにて気象解説を務め、防災気象情報や地球温暖化に関する講演・執筆活動も行う。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。2023年10月よりアメリカ・ロサンゼルスに在住。
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Instagram●参考文献/『角川俳句大歳時記 夏』角川学芸出版編集(角川書店)、松山市立子規記念博物館URL:https://shiki-museum.com/?doing_wp_cron=1772839242.3354420661926269531250