空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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卯の花腐し/卯月曇
新緑が深まるこの時期、晴天が続くかと思えば、まるで梅雨を思わせるような曇り空やしとしととした雨が続くことがあります。この様子は、旧暦四月(卯月)に白い花を咲かせるウツギ、いわゆる「卯の花」を腐らせてしまうほど降り続く雨という意味から「卯の花腐(くた)し」と呼ばれてきました。
江戸時代の俳人・小林一茶は『寛政句帖』のなかで
「塀合(へいあい)に卯の花腐し流れけり」
と詠み、腐った卯の花が家々の塀のあいだを流れる長雨の情景を描いています。卯の花腐しは俳句では夏の季語としても知られ、季節の長雨を表す言葉として古くから用いられてきました。
また、長雨の時期に入る前の薄曇りを「卯の花曇(うのはなぐもり)」や「卯月曇(うづきぐもり)」と呼ぶこともあります。いずれも、初夏の空を繊細に言い表した季語です。
雨に濡れる新緑や白い卯の花を眺めながら、昔の人々が感じ取っていた初夏の空気に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/太田 絢子 Ayako Ota気象予報士・防災士・気象防災アドバイザー。これまでNHK松山やCBCテレビにて気象解説を務め、防災気象情報や地球温暖化に関する講演・執筆活動も行う。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。2023年10月よりアメリカ・ロサンゼルスに在住。
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Instagram●参考文献/『角川俳句大歳時記 夏』角川学芸出版編集(角川書店)