空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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グライダーが飛べる理由
晴れた空に浮かぶ
積雲。この雲をつくる上昇気流を捉え、鳥のように空を飛ぶ方法があります。パラグライダーやハンググライダー、そしてグライダー(滑空機)もその一つです。
グライダーとは、飛行機と同様に翼と車輪を備えた航空機です。エンジンなどの動力を用いず、熱対流(サーマル)などで発生する上昇気流に乗って飛行します。
このサーマルこそが、積雲を生み出す上昇気流の源泉です。サーマルは、太陽によって温められた地面付近で上昇気流と下降気流が隣り合って並ぶ現象のこと。こうして発生した積雲を手掛かりに、グライダーパイロットは、目に見えないはずの上昇気流の発生場所を探しています。
また気象条件によっては、サーマルがあっても積雲が形成されない場合があり、これをグライダーやパラグライダーの分野で「ブルーサーマル」と呼びます。このような場合でも、地形や鳥の飛び方を観察したり、あるいは機体や自身の体に伝わる力から気流を感じ取ったりすることで、パイロットは上昇気流の位置や強さを見極めると言われます。そして、それらを乗り継ぐことで、長距離かつ長時間の飛行を可能にしているのです。
こうした特性を生かし、グライダーを地表面付近の大気観測に利用する研究があります。地表から放出される熱や水蒸気の影響を直接受ける低い空には、精度の高い天気予報に欠かせない気流や湿度などの重要な情報が含まれています。高度3キロメートルくらいまでの空を、大気を汚さず、ある程度自由に滑空できるグライダーは、観測手段に適しており、その有効性が示されているのです。
晴天の空で湧き立つサーマルは、パイロットの目にどのように映っているのでしょうか。
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写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/『雲の超図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)、公益社団法人日本滑空協会『グライダーとは』URL:http://www.japan-soaring.or.jp/aboutglider/、「細氷」62号2016平成28年度第1回支部研究発表会要旨『グライダーを用いた下層大気中の乱れのinsitu観測』佐藤博紀・藤吉康志、公益財団法人日本学生航空連盟『上昇気流』URL:https://jsal.or.jp/page/lift