名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:五月女(さおとめ・そうとめ)
関東地方に広がる名字で、「五月女」と書いて「さおとめ」「そうとめ」と読みます。漢字本来の読み方に従うと「さつきめ」となりますから、難読の名字といえます。
ただし、北関東では比較的よく見かける名字のため読める人は多いと思います。また、往年のプロ野球選手に五月女豊投手(さおとめ・ゆたか、阪神など)がいたため知っているという人も多いでしょう。
さて、「さおとめ」とはもともと稲の苗を植える女性を指す言葉です。「さ」とは田の神様を意味し、田植えに使う苗を「早苗」というので、苗を植える女性を「さおとめ」といいました。漢字では「早乙女」と書くのが一般的です。
しかし北関東では5月頃に苗を植えたことから、「さおとめ」を「五月女」とも書きました。そして、下野国塩谷郡五月女村(現在の栃木県さくら市)という地名ができたこともあり、次第に「五月女」が増えていったようです。
この五月女地名は読み方が「そうとめ」だったことから、栃木県では今でも「五月女」と書いて「そうとめ」と読む人が圧倒的に多くなっています(「そおとめ」とも書きます)。
一方、栃木県以外では「さおとめ」が半数以上を占めています。
また、北関東以外では「五月女」よりも「早乙女」が多く、読み方も圧倒的に「さおとめ」が多いのですが、「五月女」を「そうとめ」と読む栃木県では、「早乙女」も9割以上が「そうとめ」と読みます。
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森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
墨アート製作 書家・越智まみ(
https://esprit-de-mami.com/)