映画監督の李 相日(リ・サンイル)さん(左)と、中村鴈治郎(なかむら・がんじろう)さん(右)
先週発表された第49回日本アカデミー賞において、映画『国宝』は作品賞を含む全10部門で最優秀賞に輝きました。さらに第98回米国アカデミー賞では、メイク・ヘアスタイリング賞にもノミネートされるなど、その評価は国内にとどまらず世界へと広がっています。
家庭画報2026年1月号では、同作品を深く掘り下げ、歌舞伎俳優の中村鴈治郎さんと、監督の李相日さんの対談を掲載しました。貴重なインタビューを振り返りながら、『国宝』の魅力を紐解きます。
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Amazon.co.jpで家庭画報1月号を購入する→「女方の人生」を描くという挑戦

劇中で『京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)』を踊る喜久雄(吉沢亮さん)。
映画『国宝』は、歌舞伎の世界に入った主人公が、女方として成長していく過程を壮大なスケールで描いた作品です。原作者である吉田修一氏は、中村鴈治郎さんのもとで、黒衣姿で舞台裏や地方公演に同行し、約3年にわたり取材を積み重ねました。その蓄積が原作小説へと結実していきます。
一方、映画監督である李相日さんも「歌舞伎の女方の映画を撮ってみたいという思いはずっと持っていました」と語ります。こうした視点の重なりが、結果として作品の核を形づくり、大きな反響へとつながりました。
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吉田修一さんによる小説『国宝』。2017年~18年に朝日新聞に連載され、18年に朝日新聞出版より刊行。2025年10月末時点で累計200万部を突破している。
物語の軸となるのは、「血筋」と「芸」の対比

劇中の舞踊『二人藤娘』の喜久雄と俊介。
任侠の家に生まれた喜久雄(演:吉沢亮さん)と、歌舞伎界名門の御曹司・俊介(演:横浜流星さん)。対照的な出自を持つ二人の姿は、観客に問いを投げかけます。
中村鴈治郎さん曰く「血も大切だが、芸がなければ始まらない」。現在の歌舞伎界は、養成所出身者や一般家庭からの役者も増え、“血筋だけの世界”ではありません。
本作は、血筋と芸の鍛錬の対比を通じて、伝統芸能のリアルと普遍性の両方を鮮やかに描き出し、観客を物語の世界に深く引き込みます。
また、本作の舞台が関西=上方歌舞伎であることも、大きな意味を持っていたようです。劇中で重要な演目として登場する『曽根崎心中』に象徴されるように、上方歌舞伎には独特の「粘り」があります。逡巡し、繰り返し、感情を深く積み重ねていく演技は、江戸の“粋”とは異なる魅力を持ちます。役者の個性がより自由に発揮される土壌も、物語にさらなるリアリティを与えました。
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Amazon.co.jpで家庭画報1月号を購入する→映画表現で歌舞伎役者のリアルに迫る

劇中の舞踊『二人藤娘』の撮影現場での李 相日監督。
舞台では客席からしか観ることのできない歌舞伎ですが、映画では演者の視点を追体験できます。演者をクローズアップし、役に入り込んでいく瞬間の内面までを描写。李監督は「歌舞伎を描くと同時に、俳優の生き様を描きたかった」と語ります。その結果『国宝』は単なる伝統芸能の再現ではなく「人間の芸への執念」を描く作品へと昇華しました。
公開後『国宝』は日本国内にとどまらず、海外でも高い評価を獲得。映画祭への出品や各国での上映が相次ぎ、歌舞伎という文化そのものへの関心も高まるまでに。国や文化によって受け取り方は異なりながらも、「芸を極める者同士の関係性の美しさ」は、国内外を問わず多くの観客の心に響くテーマとなりました。さらに、映画をきっかけに実際の歌舞伎公演へ足を運ぶ観客も増加しています。スクリーンから劇場へ――新たな文化の循環が生まれたのです。
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カンヌ国際映画祭にて。右から渡辺 謙さん、横浜流星さん、吉沢 亮さん、李監督。公式上映後には約6分間、スタンディングオベーションが続いた。©Kazuko Wakayama
あの感動を、誌面でもう一度
映画『国宝』が提示したのは、伝統と革新、血筋と芸の鍛錬といった“生き様”への普遍的な問いでした。
家庭画報2026年1月号では、中村鴈治郎さんと李相日監督の言葉を通して、その核心に迫るロングインタビューを掲載しています。
映画を観たあとに読めば、より深く作品世界に入り込める――あの感動を、ぜひ誌面で改めて体験してください。
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映画『国宝』は2025年6月公開した。現在も全国・東宝系映画館などにて上映中。
©吉田修一/朝日新聞出版
©2025映画「国宝」製作委員会