空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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強い雨と大雨
天気予報では「強い雨に注意してください」「大雨に警戒してください」といった表現が用いられます。「強い雨」と「大雨」は似たように聞こえる言葉ですが、その意味は異なります。
「強い雨」とは、1時間あたりに降る雨の量(雨量)が20ミリ以上30ミリ未満の雨のことで、気象庁が雨の降り方の強弱を階級分けした定義によるものです。強い雨のほかに、1時間あたりの雨量が30ミリ以上50ミリ未満の「激しい雨」、50ミリ以上80ミリ未満の「非常に激しい雨」、80ミリ以上の「猛烈な雨」などがあります。一方、「大雨」は災害が発生するおそれのある雨を指します。注意報や警報が発表されるような雨で、基準は地域によって異なります。
そもそも雨量を示す「〇〇ミリ」は、降った雨が流れ去らず、地面に溜まったと仮定した場合の水の深さです。「20ミリの雨」とは、水が地面に2センチメートル溜まることを意味します。一見、わずかな深さに思えますが、仮に東京都渋谷区(約15平方キロメートル)に1時間20ミリの強い雨が降ると、およそ3億リットルにのぼる水が周囲より低い場所に一気に集まります。さらに雨が強まれば、排水能力が追いつかなくなり、アンダーパスが浸水したり、道路が冠水したりするかもしれません。こうした都市部とは別に、急傾斜地や崖の近くで強い雨が長時間続くと、多量の水が地面に浸み込み、土砂災害が発生する可能性があるのです。
雨の降り方が強まるほど、そして長時間降り続くほど、総雨量は増大し、その結果、大雨となる可能性があります。浸水害や土砂災害など、具体的にどのような災害に警戒すべきかは、事前に発表される「大雨に関する気象情報」などで伝えられます。このような情報を参考にして、大雨に備えてください。

写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/気象庁『雨雲の動き』URL:https://www.jma.go.jp/bosai/nowc/#lat:35.191767/lon:134.956055/zoom:5/colordepth:thin/elements:slmcs&slmcs_fcst&hrpns&liden、気象庁『雨の強さと降り方』URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html、気象庁『降水 雨の強さに関する用語(強い雨・大雨)』URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kousui.html、気象庁『天気概況について』URL:https://www.data.jma.go.jp/stats/data/mdrr/man/gaikyo.html、『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』荒木健太郎・太田絢子・佐々木恭子著(日本文芸社)