空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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朝の空と雲の名前
「暁(あかつき)」「東雲(しののめ)」「曙(あけぼの)」は、日の出前の薄明の時間帯、もしくはその時間帯の空の名前で、それぞれ異なる空模様を楽しめます。
最も早い時間帯に見られる空は「暁」。『万葉集』や『古今和歌集』などでも使われている「明時(あかとき)」が語源とされ、古くは日没以降の「宵」「夜中」に続く夜の時間区分の一つでした。現在は、やや明るくなってきた夜明けの空を指します。高い空にはまだ夜の暗さがある一方で、地平線付近の低い空はわずかに橙色に染まり始める頃です。
やがて東の空が白み、光の気配が広がる頃見られる空を「東雲」と呼びます。もとは「篠の目」と書き、篠竹で編んだ古代住居の明かり取りを意味していたそうです。これが転じて朝の薄明かりを指すようになりました。橙色に焼ける空の範囲が次第に広がり、夜の暗さが群青色へと変化していく空が想像できます。
夜が仄々(ほのぼの)と明け始める頃の空は「曙」。『枕草子』の冒頭では「
春はあけぼの」が素晴らしいと、日の出前の空の美しさについて書かれています。輝く地平線から上空へ、橙色から薄紫色へと移り変わる空は、日の出直前ならではの美しさです。
それぞれが見られる時間帯に広がる雲は、暁雲(ぎょううん)、曙雲(しょうん)と呼ばれ、東雲はそのまま東の空の雲も表します。まだ光の届かない雲は深い群青に沈み、いち早く光を受けた高い空の雲は焼け色に染まるなど、朝は空だけでなく雲も魅力的です。
早起きして、朝の空や雲の表情の変化を眺めながら、空の名前やどんな雲かを想像してみてはいかがでしょうか。きっと満ち足りた一日の始まりになるでしょう。
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写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/語源由来辞典『暁/あかつき』URL:https://gogen-yurai.jp/akatsuki/、言葉の意味辞典『「暁」とは?夜明けと実現の瞬間を表す美しい日本語の意味と使い方』URL:https://word-dictionary.jp/posts/701/#head-{wordItem.word}-description、語源由来辞典『曙/あけぼの』URL:https://gogen-yurai.jp/akebono/、『風と雲のことば辞典』倉嶋厚監修(講談社)、『雲の超図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)、『最高にすごすぎる天気の図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)