空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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放射冷却
よく晴れた朝は、雲の多い日よりも冷え込みます。これは「放射冷却」と呼ばれる現象が強く働くためです。
一日の気温変化は、地球に出入りする熱のバランスによっておおよそ決まります。地表面は、太陽から放出される熱により加熱されます。一方で、地表面は宇宙空間に熱を放出することで冷却されます。「放射冷却」とは、主に地表面が冷える現象のことをいいます。
昼間の気温は、温まった地表面に接した空気に熱が伝わることで上昇します。同時に放射冷却も起こっていますが、昼過ぎまでは加熱の効果のほうが上回るため、気温は下がりません。やがて夕方になると、加熱よりも冷却が上回り、夜間は放射冷却のみが働きます。これにより、冷えた地表面に接する空気も冷やされ、翌朝の日の出頃にかけて気温が下がるのです。
雲は、地表面から放出された熱を反射、散乱、吸収したり、雲から地表面に向かって熱を放出したりすることで、冷却効果を和らげます。このような働きが晴れた日にはないため、放射冷却が強まり、地表面付近の空気もより冷え込みます。
また、放射冷却で冷やされるのは、地表面付近のごく薄い空気の層です。そのため、風が弱いほど暖かい空気と混ざりにくく、気温はいっそう低下します。
日中の気温が次第に高くなる春。放射冷却により朝の冷え込みが強まると、最低気温と最高気温の差が20℃を超えることもあります。天気予報では気温差も確認して、体調管理に十分注意してください。
写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/『雲の中では何が起こっているのか』荒木健太郎著(ベレ出版)、『すごすぎる天気の図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)