空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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パレイドリア現象
空に浮かぶ雲の形が、動物や食べ物など別のものに見えたことや、人の顔に見えたことはないでしょうか。これらはそれぞれ「パレイドリア現象」と「シミュラクラ現象」と呼ばれる、人間の知覚の働きによって生じる心理現象です。
パレイドリア現象は、本来そこには存在しないものであるにもかかわらず、形や模様から見慣れたものの姿を思い描いてしまうことです。月の模様がウサギに見えることも、その代表的な例です。小学1年生の国語の教科書に取り上げられている『くじらぐも』(光村図書)には、児童がくじらの姿に見える雲と戯れる様子が描かれています。大きな一塊の
積雲(綿雲)や、風に吹かれて滑らかな見た目となった
層積雲(曇り雲)のパレイドリア現象かもしれません。
一方、シミュラクラ現象は、逆三角形に並ぶ三つの点があると、人の顔に見えてしまう心理現象です。いわゆる心霊写真の多くも、この働きによるものだと言われます。
パレイドリア現象の興味深い特徴は、一旦何かの形に見えると、その形にしか見えなくなってしまうことです。しかし雲は、上空の風や大気の状態によって刻々と姿を変えます。少し時間を置いて見上げたら、また別の雲が現れ、新たな像が浮かび上がってくるかもしれません。それが空を眺める面白さであり、醍醐味だと思います。
たとえば、写真の
彩雲は、皆さんにはどのように見えるでしょうか。

写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/日本認知科学会第41回大会発表論文集『幾何学図形の位置情報と性格特性の違いがシミュラクラ現象の発現に与える影響』小宮山晃央・中谷裕教著、『雲の超図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)、『すごすぎる天気の図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)、公益社団法人日本心理学会機関誌「心理学ワールド」106号『なぜ壁のシミが顔に見えるのですか?』高橋康介